第二十八章 悪魔の最期-5
「ああっ・・お、お母様・・・」
「お、王妃様っ・・・」
アズートの術が解け、正気に戻ったルナとディオンは信じられぬように見ていた。
大トカゲごと倒れたマチルダを、ディオンは剣でアズートの蛇達を払いながら助け起こした。
「お母様っ、お母様ぁー・・・」
ルナが必死に母の身体にすがっている。
大トカゲは仰向けに倒れて動かない。
「お母様っ、しっかりして・・・」
まだ痺れるルナの頭の中は母への思いで一杯であった。
「ルナッ・・とどめを・・・」
母の言葉に記憶が徐々に蘇ってきた。
アズートの催眠術も消えていた。
「ハ、ハイッ・・・」
ルナは頷くとディオンと共に大トカゲの腹から聖剣を抜き、夢中で胸に突き刺した。
「ウウギャアアアアー・・・」
最後の叫びを上げるとアズートだった大トカゲは見る見る内に泡となって消えていった。
血まみれになった顔を振向かせると、母が苦しそうにしていた。
「お母様っ・・・」
取りすがるルナの手を取って、マチルダは言った。
「ゴメン・・ね、ルナ・・・。
お前をこんな忌まわしい事に巻き込んで。
い、今・・全てを悟り・・・ました。
アズートに・・操られて・・・」
マチルダの首や胸から、血が吹き出している。
「お母様っ、死なないで・・・」
金色の瞳から涙をボロボロ流しながら、ルナは必死に叫んでいる。
ディオンも無念の涙を流している。