第二十一章 最後の闘い-7
「お、お許し下さい・・ルナ様ぁ」
司教の瞳から残忍な炎が消え、元の穏やかな表情を見せている。
とてもさっきディオンを床に叩き付け、ルナに迫っていた男と同じには見えなかった。
「わ、私は知らなかったのです・・・。
こ、こんな大それた事を・・・。
わ、私も操られていたのです、ルナ様ぁ」
嘘の筈であった。
信用できるわけはない。
ルナは心を鬼にして、聖剣を振りかざした。
「ひいいー・・・」
目の前の老人は只怯え、腕で頭を抱えて床に這って震えている。
ルナは思わず剣を下ろしてしまった。
やはり殺す事は出来なかった。
虚しさを込めた目で老人を見つめていた。
この男のせいで国民は苦しめられた。
父も死んでしまった。
やはり殺すべきなのだ。
だが、自分ではどうしても出来ない。
ディオンに頼むしかない。
愛する男の名を呼ぼうと振り返った瞬間、ルナの身体は凍りついてしまった。