第二十一章 最後の闘い-5
「ルナ、私を見ろ・・ルナ・・・」
胸の鼓動が高鳴る。
何かを待ち望んでいる。
(ダメ、見ちゃ・・・イケ・・ナイ)
必死に目を閉じようとするのだが、出来ない。
「ルナ、思い出すのだ・・ルナ・・・。
私は誰だ・・・?」
ルナの記憶に植え付けられた淫夢が蘇る。
身体が勝手に反応してしまう。
「ああ・・ああああ・・・」
ルナの形のいい唇が、開いていく。
無意識に、その言葉を言おうとしている。
「言うのだ、ルナ・・・言うのだ・・・」
ルナの唇が動こうとした瞬間、愛する男の声が目を覚まさせた。
「ルナッ、だめだ・・ルナァ・・・」
(ディオン・・・)
愛が、悪魔の呪いを打ち消したのだ。
ルナは素早く身を翻すと、腰に差した聖剣を抜き放った。
「ウギャー・・・」
アズートは大声を叫ぶと、床にもんどりうった。
ルナの手に握られている聖剣から、目も眩む程の強い光が出ている。
ルナは暫らく肩を震わせていたが、床にひれ伏すアズートを見ると落ちつきを取り戻した。
そして、怯えた目を向けて震える男に向かって、ゆっくりと近づいていった。
「ヤ,ヤメテくれえ・・・。
ま、眩しい・・その光り、苦しいぃ」
アズートは懸命に後ずさりしながら、祭壇の方へ逃げていく。
ルナは油断しないように、慎重に歩を進めていった。