第二十一章 最後の闘い-4
「ウワー・・・」
一瞬の出来事であった。
アズートの瞳が光ったかと思うと、ディオンは床に強烈に叩き付けられてしまった。
「くっくっく・・・バカめ・・・」
アズートは顔をルナに向けると、不気味な笑いを浮かべて近づいてくる。
「ディオン・・・」
ルナは床に倒れたまま動かないディオンを、泣きそうな目で見つめていた。
「心配するでない、ルナ・・・。
ディオンは気絶しているだけだ」
「アズート・・・」
一歩一歩近づく司教に、ルナは恐怖と共に怒りで細い肩を震わせていた。
これが、あのアズート司教なのだろうか。
何時も優しく慈しみの瞳で平和を唱えていた、尊敬する司教なのか。
その目は欲望にどす黒く濁り、聖職者の着物をまとっているのに、この世の何よりも残忍に見えた。
「怖がる事はない、ルナよ・・・。
私はお前を待っていたのだよ。
私の可愛いルナ・・・」
アズートの瞳が、不思議な光をたたえてルナの心に迫ってくる。
何故か足が痺れて動けなかった。
(ダ、ダメ・・ダメェ・・・)
ルナの心を、得たいの知れない物が包む。
懐かしいような、切ない気分だった。
「そうだ、ルナ・・・。
思い出すのだ。毎夜、お前が見た夢を・・・」
ルナの身体が熱くなってくる。
むず痒い快感が湧き上がる。