第二十一章 最後の闘い-3
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ルナ達は慎重に機会を伺っていた。
出来るなら、他の者を巻き込みたくはなかったのだ。
アズートが城を出て教会に現れるのを待つ事にした。
城の中だと、どうしても兵士達と戦う事になる。
アズートに操られた兵士達は、たとえルナと解っていても挑んでくるであろう。
心の優しいルナは、どうしても避けたかった。
だが、そんな事は水晶玉を通して見ているアズートには、手に取るように解っていた。
日の暮れるのを待って、わざと忍ぶように王妃を連れて城を出た。
「あっ、アズートが来る・・・」
ディオンの指摘に目を凝らしたルナは声を出した。
「お母様・・・」
ルナは焦った。
アズート司教に操られている母ともし、戦う事になってでもしたらと思うのだった。
しかし、このチャンスを逃す事は出来ない。
アズート達が教会に入るのを見届けると、二人は暫らく待った後に教会に忍び込んでいった。
勿論、見張りの衛兵は催眠術をかけて眠らせた。
日の暮れて薄暗くなった教会の中、足音をたてないように慎重に入っていった。
しかし祭壇を見たルナは、思わず声を上げてしまった。
「ああっ、お母様・・・」
祭壇の上に、後ろ手に縛られた母が横たわっていた。
すると、その後ろから眩しいばかりの光を漏らして、アズートが扉から出てきた。
「アズートッ・・王妃様に何を」
ディオンの叫び声に、アズートは皺がれた顔を崩して楽しそうに言った。
「これこれ、ディオンよ・・・。
司教を呼び捨てにするとは何事じゃ」
余裕のある表情の司教に対して、ディオンは怒りで顔を真っ赤にしている。
崇拝する王妃の姿を見て、頭に血を昇らせていた。
「あっ、ダメよ・・ディオン・・・」
ルナの止める声も若者には聞こえなかった。
腰から自分の剣を引きぬくと、真っ向から司教に挑んで行った。