第二十章 街-1
第二十章 街
ルナとディオンは自分達の目を疑っていた。
これが愛するアキシニス王国の民なのか。
人々はみな痩せ衰え、瞳から希望の光は消え去っていた。
代わりに絶望と悲しみが支配する土色の表情で、弱々しく歩いている。
樹海で大鳥と別れ、王宮のある城下街にやってきた二人が見た物は悲惨な光景であった。
重税と使役に疲れ果てているのだろうか、重い空気がたち込めていた。
街の広場で人だかりがしていた。
城の兵達が鎖に繋がれた男を鞭打っている。
「ああっ、キエフ・・・」
鞭打たれている男がキエフと解ると、思わずルナは声を出した。
そして、身体が無意識に動いていた。
ルナの瞳が金色に輝いたかと思うと身体中が光り出し、人々は眩しさに目を蔽った。
「おおあー・・・」
絶叫がこだまする中、兵士達が二人に襲いかかろうとした瞬間、再びルナの瞳が光る。
兵士達は催眠術にでもかかったかのように、その場に立ち尽くしてしまった。
ルナは自分の力の余りの凄さに戸惑ったが、直ぐに気を取り直すと兵士達に命じた。
「この者を放しなさい」
兵士達は言われるままにキエフを放した。
「お前達は城に帰るのです・・・」
兵士達は虚ろな目を開いたまま城に帰っていった。
それを見ていた民衆も呆然と経ち尽くしている。
ルナはキエフの所に走り寄ると、その毛むくじゃらの身体を揺するように言った。
「キエフッ、私よ。ルナです」
夢から覚めたようにキエフはルナを見た。
「おお・・王女様。お、俺は一体・・・?」
「詳しい話をしている暇はありません。
逃げるのですっ」