第十九章 始まり-1
第十九章 始まり
ルナの水色の髪が風に揺れている。
二人は空を飛んでいた。
銀色の翼を翻し大鳥は、二人を乗せてアキシニス王国の王宮を目指していた。
金色の光に包まれ、ディオンの腰を抱いたルナは精神を集中させていた。
心が軽い。
遺跡の神殿の泉で二人は身体を清め、ジューム国の衣装をまとった。
(ルナ・・・)
余りの美しさに、ディオンは声も出なかった。
端整な顔立ちはそのままであったが、急に大人びた眼差しとバラ色の頬が若者の心を引寄せる。繋がった後の余韻が、二人の身体中に心地良く広がっていた。
「アッ・・見て、ディオン・・・」
「おお・・・」
ルナのしなやかな指が示す樹海越しに、鮮やかな朝焼けが見えた。
少しも疲れていなかった。
結ばれたまま漂った官能の海の中、二人は心地良い眠りに落ちていた。
目覚めた時には身体中に生気がみなぎり、希望に満ちた胸の高鳴りが二人を駆りたてていた。
「行きましょう、王宮へ・・・」
ルナの声を待っていたかのように、大鳥が銀色の翼を翻して降りてきた。
二人は、それが当然のように上に乗り飛び立ったのである。
樹海が終わろうとしている。
王宮が懐かしい姿を見せていた。
何ヶ月もの旅が、二人の心に感慨深い物を抱かせていた。
「ディオン・・・」
ルナの声に振り返ると、若者は爽やかな笑顔を見せた。
それだけで二人には十分であった。
これから始まるであろう辛い闘いに立ち向かうには、大きな愛が必要であった。