第十七章 ジューム国-1
第十七章 ジューム国
それは見た事もないような獣達であった。
真青なたて髪をしたライオン。
銀色の翼を持つ大鳥。
大きな牙を剥き出しにするウサギ。
それら不気味な動物は二人を見つけると挑みかかってくるのであるが、ディオンが腰の剣を抜く前に、ルナの金色の瞳の光を浴びると急に大人しくなった。
まるで子猫のように足元をじゃれ付く獣達を従えて、二人は森の中を進んでいった。
何日、いや何ヶ月、歩いた事であろう。
キエフのくれた食料は、とっくに尽きていた。
しかし、獣達が見つけてくれる果物は今まで味わった事の無い程美味で栄養があった。
二人は疲れも覚えずに、ひたすら星が示す方向に歩いていった。
森の中は程よい気候が保たれており、夜は獣達が寄り添って温めてくれた。
それと同時に二人も愛を育んでいった。
チョットした仕草さえも二人の間には愛が感じられ、言葉にしなくても見詰め合うだけで心が通じた。
まだ幼い心は清い関係を保ってはいたが、二人の気持ちは肉体で結ぶ以上に強い愛に満ちていたのだ。
そして不思議な事に旅が進むに従って、ルナの瞳の光も強くなっていった。
それと平行するように力も増していた。
時には宙に舞いあがるようにして、ディオンを驚かせたりもするのだった。
旅で疲れている筈なのに、ルナは益々美しくなっていった。
そんなルナを眩しそうに見つめるディオンであった。
ある日、二人は遂に見つけたのであった。
しかし、ルナの口から漏れた言葉は短かった。
「そ、そん・・な・・・」
うっかりすると通り過ぎてしまうかもしれない程、荒れ果てた遺跡であった。
それらは木のツルや草に蔽われ、微かに積まれた石段や家の跡を見せていた。