第十七章 ジューム国-6
「危ないっ・・・」
咄嗟にディオンがルナを押し倒し、棺の蓋をして振りかかる石から身を守った。
大音響の後、蓋を開けてみると玄室の天井が無くなって雨雲が見えていた。
一緒だった獣達が、興味深そうに上から覗いている。
「大丈夫かい、ルナ・・・?」
ディオンがルナを引き起こすと、二人は瓦礫の上を攀じ登って外へ出た。
そこは、さっきまで二人で休んでいた場所であった。
「何だ、さっきいた所じゃないか・・・。
力を授けるっていっても僕は何ともないし、
この剣だって錆びてるし本当なのかなあ?」
そして何気なくディオンが剣を引きぬいて空にかざしてみると、錆びていた剣が急に光り出した。
「な、何だ・・どうしたんだ・・・?」
得たいの知れない力が、剣に吸込まれていく。
その振動に堪らず剣を落としそうになった時、一陣の閃光が走り、ディオンの身体に雷のようなショックが襲った。
「ウワッー・・・」
絶叫と共にディオンは地面に倒れた。
「キャー・・ディオンー・・・」
慌てて駆寄るルナの頭に、声が響いた。
(我等、この男と共にありぬ・・・)
月を蔽っていた雲が去り、辺りは何事も無かったかのように静寂に包まれていった。
ディオンが握り締めた剣は錆びが落ち、光輝いていた。
「ディオン、ディオンー・・・」
獣達が心配そうに見守る中、ルナの声が森の中で響いていった。