第十七章 ジューム国-5
(愛する者に抱かれた時、
汝は力に目覚めるであろう・・・。
マチルダもそうであった・・・。
ただ、アズートの事を知らず油断していた。
お前の愛する者はその男か・・・?)
「ええっ・・・?」
今度はディオンが赤くなる番であった。
しかしディオンの手を強く握ってルナはキッパリと言い放った。
「ハイ、そうです・・・」
二人は見詰め合った。
ディオンは嬉しかった。
愛するルナからハッキリと告げられると、妙に誇らしげに感じた。
(良かろう・・・。
その男に、我等に残された力の全てを授けよう。
そして結ばれるのだ、ルナ・・・。
それから棺の中に刀と服が入っている。
それは代々ジューム国に伝わる聖剣だ。
力を得た者が使う時、悪魔は滅びる筈だ。
我等が死ぬ直前に、魂を呼び集めて封じ込めたのだ。
目覚めた者にしか使えないが、ルナ・・・。
汝がそれを持ってアズートに挑むのだ。
解ったな?)
言葉が終わり、静かになった。
ディオンが棺の中を覗いてみると、確かに剣のような物があった。
手に取ってみると、ひどく古ぼけていてさび付いていた。
そして白い絹の衣装も見つけた。
ルナが手に取ると、ボーと光りだした。
まるで持ち主を待っていたかのように。
その時、玄室の天井が崩れてきた。