第十七章 ジューム国-4
(選ばれし者達よ・・・。
汝らは、この森を通りぬけられた者。
即ち、我等ジューム人の末裔なり・・・。
我等は汝らの来るのを待っていた。
アズートに対する復讐のため。
人々にかかる厄災を防ぐために・・・)
「ええっ、アズート・・・?」
(そうだ、二百年の間、
我等ジューム人が閉じ込めておいた悪魔が
十年前に蘇ったのだ・・・。
その悪魔は我等を滅ぼした後、
七年諸国をさ迷い力を蓄え、
マチルダを手に入れるために
アキシニス王国を襲った。
マチルダを通じて永遠の命を得るために。
ジューム国にはマチルダ以上の
術の使い手はいなくなっていたのだ。
マチルダこそが国を栄えさせ、
悪魔を封じ込める偉大な力を持つ者であったのだ)
「お、お母様が・・・?」
ルナの声が玄室に響く。
ディオンは強くルナを抱きしめた。
(そうだ、だがマチルダは今や
アズートの虜となって操られている。
我等はこうして汝らに
意志と伝説を伝える事位しか、
力が残されていない・・・。
ルナ、ルナであろう・・汝は・・・?)
「ハ、ハイッ・・・」
(汝しか、アズートに勝てる者はいない)
「で、でも私なんか・・・」
(抱かれるのだ・・・)
「ええっ、な、何を・・・?」
意外な言葉に、ルナは頬を染めた。