第十七章 ジューム国-3
「だって、みんなこの国の大切な人達なのに、
殺し合うなんて耐えられないの・・・。
私達王家がアズート司教を信じたばかりに、
大勢の人達を不幸にしているのよ・・・。
その償いを込めて、
私はアズート司教と刺し違えるつもりです。
例え、この身体や心を犠牲にしても」
ルナの決意は、ディオンの心に深く入り込んできた。
ディオンはルナの身体を強く抱きしめると、ハッキリとした口調で言った。
「ルナッ・・愛している・・・。
僕も一緒に行くよ。
力の限り君を守ってみせる。
たとえこの身が裂けようとも・・・」
「ディオン・・・」
二人の唇が合わさろうとした瞬間、強い風が森の中を吹き抜けた。
そして今まで遺跡を照らしていた月が隠れ、二人の視界を奪った。
それもつかの間、激しい音と共に一陣の雷が遺跡の真中を直撃した。
眩しい閃光があたりに広がったかと思うと、再び静寂が森を支配していった。
二人が寄り添いながら雷の落ちた場所へ近づいてみると、大きな穴が開いていた。
突然、二人の頭に何かの声が聞こえきた。
(汝ら選ばれし者達よ、入りなさい)
すると暗闇であった穴から、金色の光が二人を導くように生まれた。
(ルナ・・・)
(ディオン・・・)
二人は心の中で互いを呼び合い頷くと、手をシッカリと繋いで入っていった。
迷路のように入り組んだ石の廊下を辿っていくと、広い部屋に突き当たった。
中央に棺が置いてあり、そこから光が漏れていた。
「キャッ・・・」
ルナが小さく声を出した。
棺の廻りには大勢の白骨の死体があった。
声が再び頭の中で響いてくる。