第十七章 ジューム国-2
二人は呆然と佇んだまま、暫らく遺跡を眺めていた。
やっと見つけたというのに、キエフが言った通りジューム国は滅びていたのだ。
それは、ルナの故郷が消えていた事でもあった。
そして、アズート司教を倒す手掛かりも無くした事を意味していた。
その日二人は余り話す事もなく、眠りについた。
何ヶ月もの旅が終わったというのに、何も成果が得られなかったショックが二人の心を包んでいた。
とりわけルナの気持ちを思うと、大猿の身体にもたれながらディオンはため息をつくのであった。
「ディオン・・・」
ルナの透通るような声が、月夜に響いた。
「眠れないのかい、ルナ・・・?」
ディオンは優しく微笑むと、ルナの細い肩を引寄せて言った。
「ええ、何だか胸が一杯で・・・」
ルナはディオンの胸に顔を擦付けている。
「残念だったね・・・」
ディオンには、他に何と言っていいか解らなかった。
「ううん、いいの・・・。
何だかスッキリしたわ。
この旅で私も少し強くなった気がするし、
闘ってみようと思うのアズート司教と」
「ええっ・・・?」
ルナの言葉に驚いたディオンは、大きな声を出した。
ルナはその唇をそっと自分の顔で蓋をすると、微笑みを浮かべて言った。
「多分、負けると思うわ・・・。
捕らえられて奴隷にされるかも知れない。
でもその時は死ぬつもりです」
「ルナ・・・」
「ごめんなさい、ディオンを巻き込んで。
でもキエフの話や村での人々の苦しみを
見ているとジッとしていられないの・・・。
お父様やお母様が
どうなさっているかも心配だし、
革命軍の事も・・・」
ルナの瞳から涙が流れている。