第十六章 戦士-2
「そのためにも早くジューム国に
行かなけりゃあ・・・。
ちゃんと食べないと体力がつかないよ、ルナ」
ディオンの言葉に無理に笑顔を作ると、ルナはヤギの乳を飲干した。
その時、キエフの毛むくじゃらの身体が戸口に立っているのが見えた。
二人が笑顔を見せると、小さな瞳の色を微かに変えて包みを投げてきた。
一瞬、笑ったように見えた。
「直ぐに、出るんだ・・・」
短く言った男の言葉に、二人は驚いた。
「ええっ・・ど、どうして・・・?」
ディオンの言葉を遮るように、キエフは森の奥を指差して言った。
「もう直ぐ城から兵が来る。
お前達を捜しにだ・・・。
俺もこれから街に出る。
国中の村が蜂起しようとしている。
司教を倒すためだ。
このままでは、国が滅んでしまう・・・」
そう言うと、二人を森の方に向かせて星を指差して説明し出した。
「あの一番明るい星を目指して行くと、
昔栄えた国があると聞いている。
だが、今はもう滅びているかもしれない
あそこには凶暴な猛獣達が群れている。
誰もそこに踏み入れる事は出来ないのだ。
ジューム人を除いては、な・・・。
隠れるだけなら何とかなるだろう。
早く行け・・・」
「キ、キエフ・・・」
振向いたルナが思わず声を掛けると、キエフは膝をついて頭を下げた。