第十四章 川下り-1
第十四章 川下り
洞窟を抜けて川に降りると、二人は木に隠してあったイカダを見つけた。
激しい流れに沿って川を下りながら、ルナはディオンの身体にしがみ付くようにしている。
幼い頃からずっと一緒にいたのに、気付かぬ内に逞しい若者に成長したディオンを頼もしく思っている。
「やっぱり・・・
城では僕達の捜索隊が出ているらしいっ」
砕け散る水しぶきの音に負けぬよう、大きな声でディオンが叫んでいる。
「だけど、まるでお尋ね者みたいに賞金が懸かっているんだ。やっぱり、司教の企みなんだろうけど」
ルナの心は揺れていた。
あの日見た事は事実なのだろうか。
母と司教が交わっていたなんて。
自分が見た幻ではないのだろうか。
このまま城に帰った方が良いのでは。
いや、違う。
それなら、あんなならず者のような者が捜しに来る筈はない。
明らかに男達の目には、欲望が浮かび上がっていたのだ。
あの時の恐怖は忘れられない。
咄嗟に出したパワーは、自分でも信じられない程の強さだった。
自分の身体が確実に変わってきている。
これもジューム人の血と、アズートによる妖術のせいなのだろうか。
果してアズートを倒す事が出来るのだろうか。
不安がルナの心を支配する。
だが、今は腕の中の温もりが嬉しい。
逞しく成長したディオンが、心から愛おしく思えてくる。
この男についていこうと思った。
このまま二人で一緒にいられるのなら、城に帰れなくてもいいとさえ思えてくるのだ。