第九章 ディオン-1
第九章 ディオン
気が付くと、外にある迷路庭園の中にいた。
(わ、私・・・?)
ルナは不思議な力を使って、教会から脱出したのだった。
精神のパワーで、瞬間的に空間を移動した。
(に、逃げなければ・・・)
まだ震える足を引きずるようにして、ルナは駆け出していった。
ディオンの住む貴族達の屋敷に向かい、懸命に走っていく。
頭の中を大トカゲと化した司教の言葉と、そこから放たれた精神のパワーを読み取ったルナの記憶がおぞましく蘇る。
「イヤッ、イヤァッー・・・」
大粒の涙を流しながら、ルナは記憶と戦っていた。
認めたくない事実が、ルナの清純な心を苦しめる。
(お前は淫乱な女だ・・・)
「違うっ、違うー・・・」
耳をふさいでも、声は消えない。
(ワシの魔力を受けて、
お前は生まれ変わったのだ・・・。
そして、お前の夫である王の精気を吸い取り、
こうしてワシに捧げるのだ・・・。
おおお・・美味いぞ・・・最高だ・・・。
ジューム族の生き残りの、
お前にしか出来ない事だ・・・。
長い間、呪いに封じ込まれ、
さまよっていたワシだったが
十年前に蘇ったのだ・・・。
七年、諸国をさ迷い妖力を蓄えた。
そして、ようやくお前を捜しあてた。
マチルダ・・・可愛い奴よ・・・。
何も知らずワシの奴隷となり、
愛する王の命を縮めながら俺に仕えるのだ。
じきに、ルナも奴隷になる。
お前の淫乱な血をひいて・・・
イヤ、もっと淫靡に調教してやる。
事実、ワシが魔力をかけた夢の中では、
既に官能に咽ぶようになっておるわ・・・。
今度の過ぎ越しの祭りが終われば、
実際にこの蛇達の餌食になってもらうぞ。
ウハハハ、ハハハハハー・・・。
お前達は淫乱なメス犬として一生、
ワシの奴隷として使えるのだー・・・)