第八章 企み-2
ネットリとした官能の記憶が蘇る。
あの大トカゲの長い舌を、自分から美味しそうに求めていたではないか。
吐きたくなるような気分と共に、不条理な官能の海に引き込まれるような気持ちになりそうになる。
(ダ、ダメッ・・ダメよ・・・)
ルナは必死になって自分の理性と戦っていた。
怪物の魔力に心が溶けてしまいそうであった。
こんなおぞましい怪物に、毎夜身体を濡らしていたとは。
ルナは死んでしまいたくなった。
だが、母がいる。
何とか母を救わねば。
懸命に立ちあがろうとするルナの耳に、怪物となった司教の声が聞こえてきた。
「フフフ・・マチルダよ、いいか・・・?」
「あああっ、あふーんっ・・・あんっ、あーんっ」
母は狂ったように腰を振って、蛇を飲み込んでいる。
「おおお、ほっほほ・・・。
そうだったな。
こうなってはもう、何も聞こえまい・・・。
完全に夢の世界をさ迷っているからな」
大トカゲは嬉しそうに蛇達を、母に出し入れさせている。
「おおおお・・力がみなぎる・・・。
そうだ、蛇どもよ・・・。
もっとマチルダから生気を吸い取るのじゃ」
凄まじい精神のパワーが、ルナに押し寄せてくる。
邪念に固まったおぞましい光景が、ルナの頭の中に広がっていった。
そして、全てを悟ったのである。
「ああああ・・あああああ・・・」
足が震える。
腕に力が入らない。
でも、逃げなければ。
ルナの瞳が徐々に光っていく。
金色の光が一瞬、強くなったかと思うと扉の向うからルナの姿が消えていた。
奥の部屋ではマチルダ王妃の喘ぎ声が、妖しく響きわたっていくのだった。