第六章 不思議な力-1
第六章 不思議な力
「いいじゃないっ・・通してよ」
ルナの透通る声が、教会の入口の大きなアーチに反響している。
「いいえ、いくら王女様といえども過ぎ越しの祭りの翌日に、教会に入る事は許されておりません。これは司教様のご命令です」
頑固そうな顔をした門番が、大きな身体で扉の前を塞いでいる。
それでもルナは懸命になって男を説得しようとしている。
「お願いっ、さっきご挨拶にいったらお父様の顔色が悪かったの・・・。少しでも元気になるよう、教会でお祈りさせて欲しいのよ・・・。お母様もいらっしゃらないし、凄く不安なの・・・司教様に会わせて・・・」
そんな少女の願いにも、門番は表情も変えず冷たく言った。
「なりませんっ・・・。
司教様は御瞑想中です。
何びとも中に入れるなという、ご命令です」
ルナは不思議に思った。
何時もならルナの顔を見たとたん嬉しそうに顔を崩して話しかける男が、まるで人形のような冷たい表情をしている。
どうしても司教に会って父のためにお祈りをしたかったルナはソッと腕を組むと、真っ直ぐに門番の目を見て言った。
金色の瞳が光っていく。
「ううっ・・・」
男は、その光に吸い込まれるように目を開いている。
「さあ・・そこをどきなさい・・・」
「は・・い・・・」
夢でもみているような表情で答えている。
ルナの瞳の輝きが更に強くなると、男はその大きな身体で少女を包むように教会の中に招き入れた。
「有難う、そのまま見張っているように」
ルナの金色の瞳が、教会の薄闇の中に消えていった。
ステンドグラス越しに差し込める淡い光の中を、少女は進んでいった。
金色の瞳の光が、徐々に薄れていく。