第五章 噂-4
ルナの悲しそうな顔を見ている内に、ディオンは激しく後悔をした。
やはり、言うべきではなかったのだ。
ディオンは取り繕うように言った。
「ゴ、ゴメン・・本当に噂なんだ・・・。
ルナを悲しませるつもりじゃなかったんだ」
ディオンの優しい言葉にやっと顔を綻ばせると、ルナは無理に元気な声を出した。
「そうよ・・ディオンのイジワル」
そして迷路の中を駆け出していった。
「あっ、待って・・ルナー・・・」
庭園の中に、再び二人の笑い声が木霊していった。
「ハハハハハ・・・」
「ホホホホホ・・・」
(司教・・様・・・)
それでも駆け回りながらルナの心に、言い知れぬ不安が込上げてくるのであった。