第四章 白い記憶-6
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白かった。
ルナは白い海を漂っていた。
涙で濡れた睫毛のカーブをそっと開くと、眩しい朝の光が飛び込んできた。
ルナは、まだ自分が何処にいるか分らなかった。
ようやく自分のベッドであると気付くまで、随分と時間がかかった。
夢であった。
だが、それがどういった夢なのか何も覚えていない。
ただ熱く火照った身体が、むずがゆかった。
この頃目覚めると、いつもそうだった。
どんな夢であったか懸命に記憶を辿るのだが、思い出せないのだ。
ただ心に残るのは言い知れぬ不安な気持ちと共に、不思議な快感の余韻であった。
そして・・・。
ルナは小さな手を、恐る恐る這わせた。
長い足の付根でそれが止まると、少女は怯えた表情で呟いた。
「また・・濡れてる・・・」
微かな静電気を伴って白い指が花園を辿ると、ネットリとした感触が伝わった。
先日、十五歳の成人式を迎えてから毎日ように夢をみる。
そして、少女だったルナの身体も徐々に大人びていった。
(これが大人になるという事なのかしら・・・?)
ルナはベッドの中で、漠然とした思いに浸っていた。
戸惑いと不安。
思春期にまとわりつく、一種の儀式なのだろうか。