第三章 過ぎ越しの祭り-3
ディオンに、その顔を見られるのはイヤであった。
だが年は上でも純情なディオンは、幼い計略にマンマとハマッテしまうのだった。
「そ、そんな事・・・。
確かに僕は王妃様の事は好きだけど、
それは早くに母を亡くしてるからで、
本当に好きなのはルナ・・・」
そこまで言って、ディオンは慌てて自分の口を手で押さえたが後の祭りであった。
ルナが獲物をしとめた猟師のように、満足そうな表情で微笑みを浮かべている。
金色の瞳が光を増してくる。
「本当・・・?」
ディオンの手を、小さな手でシッカリと握り返して囁いている。
「ああ・・本当さ・・・」
ディオンの心が吸い込まれていく。
幼い頃から、この金色の光を見つめていると何も逆らえなくなってしまうのだ。
不思議な力であった。
「私の事・・好き・・・?」
ルナの手を通して得体の知れない気持ちが、ディオンの身体を包んでいく。
十五の成人式を迎えてから、ルナの力は更に強くなった気がする。
「ああ・・好き・・だよ・・・」
「じゃあ、キス・・して・・・」
ルナの形の良い唇が近づいてくる。
プックリとした唇は僅かに濡れていた。