褒美-1
銀三は、真理子が又まくしたてるのを黙って聞いていた。
(旦那との事聞くとキレるな。図星か。)
(旦那とマンコどころか乳も揉んでくれないんだな。)
と思った。そして、
「アンタが良いんだ。」
「アンタのオッパイが吸いてぇ。」
「こうゆう情報は、ギブアンドテイクだろ。」
「時間掛からないし、すぐに済む。」
と持ち掛ける様に言う。真理子は首を振り、拒否する。銀三は諦め貰った名刺を差し出し、
「こいつは返す。」
「もう、連絡する事も会う事も無い。」
と冷然と伝える。真理子は俯き、唇を噛んでいる様だ。おもむろに顔を上げると真っ赤になっていたが、
「本当に触ったりするだけよね?」
「セックスはしないわ。」
と囁く様に話す。銀三は内心驚いたがそれを表に出さず、
「ああ、しない。」
「入れたりしないから安心しな。」
と返した。真理子は周りを見回して、
「もしかして、ここで?」
と不安そうだ。銀三は少し考え、
「次の電車に乗るんだ。」
「そして、次の駅で降りたら俺の後に付いて来れば良い。」
と答える。真理子は、微かに頷いた様に見えた。銀三は、
(やっぱ、最初の小魚群で当たればツイてるって事だ。)
と真理子に背中を見せて乗降口のエリアに並ぶと笑みを浮かべた。
真理子は、銀三の破廉恥な要求に応じてしまった事が自分でも何故なのか理解出来なかった。確かに銀三の情報は真理子の予測を裏付けて余り有る物だったが、銀三の言う様にこれからも有意義な情報をもたらす可能性は不確かなのだ。
(銀三が、名刺を返して連絡を断つと言った時思わず要求を飲んだ。)
(今まで、こんな理不尽な要求断って来たのに。)
と思い返す。若い時に、情報提供者から身体の見返りを求められた事も何度か有ったがきっぱり断って来たのだ。
(今さら断れない。)
(断ったら二度と情報をくれないだろう。)
と銀三の少し後ろに並んでいると程無く電車がやって来た。扉が開くと誰も降りて来ない、銀三はさっさと乗り込むと反対側扉の近くに位置する。
乗客は少なく座席に座れたが、真理子も銀三の近くの座席前に立ち吊革を掴む。胸がドキドキして、顔が火照るのが分かる。
(落ち着くのよ。)
(10代の小娘じゃあるまいし、胸を少し触らせる位何!)
(今日は、ツープッシュも無い!)
(この前見たいな、痴態は晒さないわ。)
真理子は、覚悟を決めて口を真一文字に閉じた。次の駅のホームに電車が停車した。銀三は、扉が開くと下車する、真理子も続いた。下車した乗客は、そんなに多くは無い。
改札口を抜け、ほとんど人が向かう出口では無く左側の出口に男は向かった。▼▼大学、▼▼高校の表示が見える。主に学生が通学用に使う出口の様だ。この出口に向かう人は、数える程だった。
真理子は、この駅では降りた事が無いと思いながら銀三の後を付いて行くと男が飲料の自販機の所で止まり缶コーヒーを買い飲んでいる。真理子が近くに来ると、
「飲むか?」
と聞いて来る。真理子は首を振り、
「要らないわ。」
と返す。銀三は、コーヒーを飲み周りを見ている。
「もうすぐ、誰も通らなくなる。」
「この出口は、学生の通学や帰宅の時間以外は余り人が通らない。」
と真理子に説明する。真理子は内心、
(まさか、ここで!)
と驚いていると、銀三は急に缶コーヒーを飲み干すと缶をゴミ箱に捨てた。そして真理子を見て、
「良し、行くぞ。」
と声を掛ける。銀三が再び歩き出すと真理子も続いた。歩き出して間もなく、銀三はトイレ表示の有る路地見たいな小さな通路の方に入っていく。そこには、男子トイレと女子トイレが並んでいた。銀三は、
「少し、待て。」
と言うと男子トイレに入り、1分も経たない内に戻り、
「良し、こっちに入れ。」
と言う。真理子が思わず、
「男子トイレに入るの?」
と驚いて聞くと銀三は頷き、
「そうだ、早く入らないと人が来る。」
「急げ。」
と命令して来る。真理子が躊躇していると、
「アンタ、忙しいんじゃ無いのか?」
「早く済ませたいんだろう?」
とせき立ててくる。真理子は、
(男子トイレで、ヤクトリの捜査官が淫らな行為?)
(駅員でも見つかったら懲戒物だわ。)
と悩むも早く終わらせて支部に戻りたいとも思った。仕方無く男子トイレに入る。トイレの内部は割と綺麗だった。銀三が一番奥の個室の前に行くとドアを開け、真理子に入る様促す。
銀三は、真理子を中に入れ鍵を掛けた。ドア内側上に付いているフックを指し、
「上着を掛けな、シワになるぜ。」
と小声で言う、真理子は頷き黒い上着を脱いでドアフックに掛けた。銀三は、その間に便器の蓋を開けて便座をトイレットペーパーで拭いている。銀三は便座に座ると
「俺の膝の上に乗りな。」
と真理子を見上げて指示する。真理子は、流石に銀三の言うがままに動けない。痴漢である銀三とラブラブな若いカップル見たいな事は出来ないと思うのだった。銀三は苛立ち、
「時間無いんだろう。」
「狭いからこれが一番なのさ。」
と促す。真理子は嫌だったが、銀三の言う事は最もだとも思った。おもむろに脚を銀三の膝の外側に開いてゆっくりと腰を銀三の膝の上に降ろす。