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こいびとは小学2年生
【ロリ 官能小説】

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ボロネーゼ・メリーゴーラウンド・そして-4


 パスタをスプーンに乗せてくるくる巻くことをあきらめたしのちゃんの口元に赤いソースが付いている。俺はナプキン入れから紙ナプキンを一枚出してしのちゃんの口元を拭いた。紙ナプキンごしに伝わるしのちゃんの唇の感触。いや、まるで休日に父親が娘の世話をしているような、こんな微笑ましくも牧歌的に見える光景の中で勃起してるのはおかしいだろ、落ち着け俺。
 コーヒーを飲もうとして、マグが空っぽなのに気づく。おかわり淹れてこようかな、と腰を浮かしかけると、

「あ、あたしが持ってきてあげる」

としのちゃんが言って、自分のコップと俺のマグを持ってドリンクバーへ向かった。振り返って様子を見てみると、しのちゃんはまず自分のメロンソーダをコップに注ぎそれをいったんカウンターに置いて、両手でコーヒーポットを持ってマグにコーヒーを注ごうとしている。カウンターがちょっと高めだから、しのちゃんは軽く背伸びをしている。その後姿がたまらなく愛おしい。尽くされたい、っていうんじゃないけど、好きな人が自分のためになにかをしてくれるのはとても幸せな気持ちになれる。そして、好きな人のために自分がなにかをするのも、同じくらい幸せな行為だ。
 クリーム色のトレーにコップとマグを載せて、慎重な足取りでしのちゃんがテーブルに帰って来る。その表情や仕草をぼうっと見ていると、テーブルにマグをかちゃん、と置いたしのちゃんが、おどけた口調で俺を叱る。

「お兄ちゃん、ありがとう、は?」

 あ、ごめんごめん、ありがとう。得意げに笑うしのちゃんの頬をつつく。さっきの親子連れが帰ったあとのテーブルを片付けていたウエイトレスが、俺たちを見てこらえきれずに笑っていた。


 この間お菓子を買ったバラエティショップで、しのちゃんが欲しがっていた「かわいいおかし」を探す。

「あった、これー」

 ティックトックゼリー、と書かれたポップをしのちゃんが指差す。

「おにいちゃん、これ知ってる?」

「ううん知らなかった。流行ってるの?」

「うん、好きって言ってる子が学校にいる、すっごいおしゃれして学校くる子。あと、ユーチューバーの人もおすすめって言ってた」

 しのちゃんは一袋を手にして俺にかざして見せる。

「ね、かわいいでしょ」

 大きなハングル文字が書かれたパッケージの下半分は透明になっていて、果物のような形をしたチューブの中にブルーのゼリーが入っているのが見える。結構原色きついな。
 青のぶどう味(青なのにぶどうかい)と緑のソーダ味(だから青と緑逆だろう普通)を一袋づつ買ってパープルのキッズリュックに入れたしのちゃんは、バラエティショップを出たところで俺の手をきゅっと握って言った。

「お兄ちゃん、お菓子買ってくれてありがとう」

「どういたしまして」

 ふへへ、と、ふたりで笑う。

「あのね、お兄ちゃん」

「ん?」

「あたし、もうひとつだけ、遊園地で乗りたいのがあるの」

「いいよ、じゃあ屋上行こう」

 しのちゃんと手をつないで、屋上につながる階段をのぼる。午後の眩しい日差しが、透明ガラスの扉を抜けて階段や踊り場を白く照らしている。
 屋上に出たしのちゃんが俺の手を引っ張って誘導した先は、メリーゴーラウンドだった。白毛と栗毛の馬が交互に並び、ゆっくりと上下するタイプだ。

「ねー、お兄ちゃんも一緒に乗ろー」

 マジかい。メリーゴーラウンドに乗っている自分を想像して、一瞬気恥ずかしさが走る。

「ほらあ」

 しのちゃんが腕を強く引っ張る。覚悟を決めた俺は、切符売り場で「大人と子供一枚ずつ」と告げて料金を払い、栗毛の馬に跨る。うおお、思ったより上下の高低差あるな。
 一つ前の白い馬に跨ったしのちゃんが、こっちを振り向いてピースサインを見せる。馬の上下に合わせて、きゃっきゃとはしゃぎ声を上げる。屋根や床の赤と、ワルツのような音楽が幻想的な雰囲気を醸し出す。こういう雰囲気の中でしのちゃんを眺めていると、いい年した俺がメリーゴーラウンドに跨っている気恥ずかしさがどっかに飛んでいく。 世の中のパパはみんなこういう気持ちなんだろうか。俺としのちゃんの関係は親子ではなく「こいびと」だけど、俺の中にはしのちゃんを父性から見ている部分があるし、しのちゃんも俺に父親の面影を見ているかも知れない。今日だってペドフィリアが幼女を連れ回しているってわけじゃなく、しのちゃんの父親だったらどう行動するか、ってことを考えながらのデートだ。まあ、それこそペドフィリアの勝手な言い訳かもしれないけど。
 メリーゴーラウンドの回転と上下運動が徐々にゆっくりになり、やがて音楽もフェードアウトして動きが止まる。馬から下りたしのちゃんが、

「楽しかったー」

と言って俺にぎゅぅぅっと抱きついてくる。順番待ちしている、孫を連れた初老の女性が俺たちを見てにこにこと笑っている。こんな平和な時間、永遠に続くといいのに。


「ほんとにありがとー。すっごく楽しかった」

 いつもの歩道橋のあたりまで来ると、しのちゃんは俺の手を握る力をちょっと強めた。

「俺もすっごく楽しかった。実はさ、こいびととのデート、久しぶりだったんだ」

「ほんとに?ね、前はいつだったの?」

「うーん、しのちゃんが生まれる前かなあ」

「えー、お兄ちゃんモテなかったんだ」

 ニヤニヤしながらしのちゃんが言う。事実だから怒れない。

「うん、まあ、ね。けど、いいんだよ今はしのちゃんがいるから」

「ふふふ。あ、お兄ちゃんだいじょうぶ、ひとりで帰れるよ」

「わかった、気をつけてね……そうだ」


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