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僕と社長と不思議な彼女
【コメディ 恋愛小説】

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僕とおじいさんとガラス細工-1

爽やかな朝

「もし、お兄さん……」

会社に向かう途中、おじいさんに声を掛けられた

「ちょっと寄ってかないかい?」

所謂、露店というヤツだ
自分の性格上、声を掛けられたら断れない
だから、「まぁ興味あるし、そんなに急いでないから」と自分に言い訳をしながらおじいさんに近付いた

「何を売ってらっしゃるんですか?」

「なぁに、少しの夢だよ」

「?……絵本か何かですか?」

「少し違うな……ちょっと"見て"いくかい?」

そう言うとおじいさんは、となりにある鞄からガラス細工の馬を取り出した

本当に綺麗なガラス細工だ

「これ……すごいですね!
あれ?おじいさーん?」

おじいさん行方不明
どこ行った?

『このガラス細工に秘められた物語を見せてあげよう』

いない筈のおじいさんの声が聞こえた瞬間、意識が遠のいた


『むかしむかし
ある村に、たいそう美しい娘がおりました
娘の家は、その村一番の貴族です
とうぜん村の男達は娘と結婚したがりました
ある日、毎日求婚してくる男達にうんざりした娘はこう言いました

世界で一番美しいものを持って来た人と結婚します

それを聞いた村の男達は、世界中から美しくてめずらしい物を集めました
ある者は宝石
ある者は黄金
ある者は鏡を差し出しました
しかし娘は全てを受け取りませんでした

宝石も黄金も持っています
鏡など部屋に行けば何枚もあります

娘はそう言い残すと、屋敷の中へ入ろうとした
そこに、弱々しい青年の声が響いた

私の持って来た物を見て下さいませ

娘は彼が持って来た物に目を奪われた
彼が持って来た物
それはとても綺麗なガラス細工でした
娘は――――』


声が止んだ

「あれ?続きは?」

何故途切れたんだろう

「この先は誰も知らないんだよ
いや……知らない方がいいのさ」

「どうして?」

「幸せはその時だけなのさ
むやみに全てを語るのは良くない」


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