聡美(三.)-1
前田がパートの仕事に来なくなってから、同じシフトの仲間たちも前田のことを噂し合っていたが、誰もその理由を知らないらしかった。
ただ一人聡美だけはあの日の公園での出来事があったため、前田が来なくなってから言い知れぬ罪悪感に苛まれていた。
ある日、仕事を早退させてもらった聡美は、前田のアパートを訪ねてみようと思い立った。アパートの場所は以前行った飲み会の送迎で訪れたことがあったため知っていたからである。
アパートの前に着き、玄関の呼び鈴を鳴らすと、ドアの向こうから物音がしてとびらが開いた。出てきたのは前田だった。
前田は聡美の姿を見ると、とくにこれといった感慨もなく部屋に入るようすすめた。
部屋の中は以前とくらべて散らかっており、床の上には本や書類が散乱し、テーブルの上には書きかけのレポート用紙が何枚も置かれていた。
それを見た聡美は、前田が仕事に来なくなった理由がわかった気がして少し安堵した。
前田は散らかった本や書類を片付けながら、ひとまずテーブルの近くに座るよう指示した。
「急に来なくなったからみんな心配していたのよ。学業がいそがしいの?」
「ええ、論文やレポートの提出に追われていて」
「仕事はしなくてもだいじょうぶなの? お金とか、ほら、いろいろ」
「問題ありません。もともと、親の仕送りだけでじゅうぶんやっていけるんです。ただ、昔から本が好きなので、一度本屋ではたらいてみたかっただけですよ」
「そう……」聡美はつぶやきながら、本棚に囲まれた部屋をじっくりとながめた。
「でも辞めるなら、店長に連絡くらいはしておいたほうがいいわね」
「そうします」
そこで二人の会話は途切れた。
「――じゃあ、わたし、そろそろ帰るわね。この前のことがあったでしょう? もしかしたら、前田くんが来なくなった理由はあれじゃないかって、不安でしょうがなかったのよ。でも、元気そうでよかったわ、それじゃあ――」
聡美が立ち上がりかけたそのとき、またもや前田は聡美に抱きつくと、しばし見つめ合ったのち唇を重ねた。その行為に以前ほどの強引さはなかった。
なぜか聡美も拒絶する素振りをみせなかった。だから返って戸惑ったのは前田のほうであった。
「――嫌じゃないんですか?」
「……」
聡美は何も言わなかった。ただ、身体が燃えるように火照っているのだけはわかった。
前田は聡美を押し倒すと、ブラウスのボタンをはずし、ブラジャーの上から乳房に触れた。そしてブラジャーのフックをはずしてブラウスと共に剥ぎ取ると、聡美の白い乳房があらわになった。
聡美の乳房はあまり大きなほうではなかったが、現在の年齢と子どもを二人産んで育てていることを考慮しても、まだまだハリとツヤが残っていた。また、形もキレイに整っており、それは聡美のひそやかな自慢でもあった。
前田は聡美の乳房にむしゃぶりつき、手のひらと指でわしづかみにすると乱暴に揉みしだいた。
そして手際よくスカートとストッキングを脱がし、下着の上から敏感な箇所を指先で愛撫した。
聡美の秘部から愛液があふれ、下着はまたたく間に濡れた。前田はその下着も剥ぎ取り、股間に顔をうずめた。
シャワーをあびていなかったため汗のニオイが気になったが、前田はそんなことなどまるで頓着していないようだった。
やがて前田も衣服を脱ぎ棄て、下着をおろすと、勃起した若い男の性器を露出させた。
今まで男性経験の乏しかった聡美が見てもわかるほど、前田のモノは大きかった。夫のサイズでも大きいと思っていたのに、前田のそれはさらに大きく逞しかった。なにより若さのためか、前田の男性器は天に向かって高くそそり立っていた。
前田はそれを聡美の顔に近づけた。指先でつまみ、あらためて大きさを確認すると、ゆっくりと愛撫し、口にふくんだ。大きすぎて呼吸が苦しく、さらに前田が急に腰を動かしたため、聡美は何度もむせかえった。
そのあいだも前田の指は聡美の股間をまさぐり、やがて中に進入してくると、愛撫はいっそう激しくなった。
聡美の陰部からびちゃびちゃと愛液が飛び散り、床をよごした。
そして前田は聡美の口から男性器を引き抜くと、今度はそれを女の陰部にこすりつけた。
そのとき、聡美は上体を起こして注意をうながした。
「おねがい、ゴムはつけて」
前田は無表情のままくるりと身体をひねると、うしろにある引き出しから避妊具を取り出し、それを慣れた手つきで取り付けた。
「ねえ、こんなこと一度だけよ。これだけにして忘れましょう……」
聡美はそう言うと、あとはもう何も言わなかった。