Shooting Star-1
「ねぇ、幸せってなんだろ?」
「ん?何をいきなり?澄。」
ここは学校の図書館。放課後なので誰もいない。私、澄(すみ)と、彼、凉(りょう)以外は。窓の外には鮮やかな夕日。オレンジ色の光が本棚の上の窓から差し込む。私達は、その光を一番浴びれるテーブルに座って勉強していた。
「や、だから幸せってどういうことなんでしょう?」
「むぅ…幸せねぇ…。」
凉は右手に持っていたシャーペンを指先でくるくると回す。10cm弱のシャーペンが弧を描く。私は彼の口から答えが出るまで、それを見つめた。
「やっぱ、飯食えて、働けばお金が貰えて、結構困ることのない生活が出来ることじゃね?」
「…なるほど。」
「納得出来た?」
「いや、全然。」
「んなぁ…。」
「他にも言ってみてよ。」
…彼の口から理想の言葉が出るまで言わせてみようかな。
「えー、生きてるってことですかね。」
「他には?」
「むぅぅ…。いざ聞かれると分からない…。」
指で回していたシャーペンを止め、ほんのり赤がかかった頭に手を置く。凉が悩むときにする仕草だ。
窓から見える夕日は、すっかり地平線の向こう側に隠れ、窓からは夕日の代わりに月光が差し込む。ふと時計を見ると午後8時を指していた。
「もう、帰ろっか。」
「あぁ、送ってく。」
「さんきゅ。」
そう言って二人で学校を出る。
外はもう薄暗い。内心ちょっと怖い私は、彼と握る手を強くする。