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視線の先
【その他 官能小説】

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視線の先-1

理衣が大学の授業を終えて校門を出ると、赤いスポーツカーがクラクションを鳴らす。
「理衣!」
 さらりとした長髪をなびかせて、運転席から顔を出した男は笑いながらその名を呼んだ。
 学び舎に不似合いなその車は、そこにいた生徒達の好奇と羨望の眼差しで包まれていた。彼、恭二は、恐らくはそれに気付いているからこそわざわざここまで乗り付けるのだろう。
 理衣は、くすぐったいような、しかし沈んだ気持ちを抱えたままで助手席に乗り込んだ。
「どうした?元気ないな?」
「ううん、何でもないの」
「そう?」
 聞き終わると、何事もなかったかのように車が発進した。
 理衣がちらりとメーターを見ると、法定速度は完全にオーバーしていた。恭二は鼻唄交じりにアクセルを踏み込む。
「あの、恭二さん……」
 おずおずと声を掛けた理衣に、恭二は前を見たまま片手を振る。
「恭二でいいって。俺も理衣って呼んでるしさ」
「あ、うん……」
 それきり、言葉を続ける気にはならなかった。
 フロントガラス越しに見える景色は独特で、現実感がなく、自分が自分でないような気すら起こる。
 スピードに対する感覚も鈍っている。恐らく、恭二もそうなのだ。

 気がついたら、ベッドの中にいた。
 恭二の頭が、胸元に埋められている。痺れるような快感に、我を思い出す。
 そうだ、あの後すぐに、ホテルに直行したんだっけ。
「可愛いよ、理衣……」
 顔を上げた恭二が、理衣の唇を舐める。始めは舌先でくすぐるように、次第に舐めるように。
 恭二の唾液が理衣の唇を濡らす。やがて口内に侵入する。
 理衣もそれに応えるように舌を絡める。静かな室内に、ただ響く求め合う音。
「あ…んっ……」
 同時に人差し指と親指で胸の突起を攻められ、理衣はたまらず声を出す。
 ますます激しく動く指。赤くそそり立つ乳首を、今度は手の平で回すように擦る。
「ああっ、はあっ……」
 唇と唇の間から漏れる声。恭二は理衣の耳元で囁く。
「俺の名前、呼んでよ」
 男の名を呼ぶには抵抗があった。この男が、本当に自分を愛しているわけじゃないと思うから。
 会った回数と抱かれた回数は同じだった。そんなの、本当の愛じゃない。
「ねえ、理衣、お願い」
 甘えるような声。長い髪がよく似合う長身、自信に満ちた表情、でも、ベッドの上でだけ見せる哀願。愛されてないと分かっていても、受け入れてしまう自分がいる。
「恭二……ああっ、恭二っ!」
 下肢に伸ばされた手は、迷わず足の付け根に届く。
 秘唇はすでに濡れそぼっていた。恭二は表面を撫でるようにして液体を絡めとると、その指で敏感な肉芽を擦った。
 先ほどとは比べ物にはならない快感に、理衣の身体は大きく反る。股間が熱い。
 割れ目に二本の指が侵入する。きつく入り口を閉ざそうとする襞を揉み解すように、指先が動く。
 人差し指の先端が肉壁に擦り付けられ、身体中に走る電流にも似た感触。解れたそこからはますます激しく愛液が溢れ、恭二を求めて腰が動く。
「恭二っ、来てっ…!」
 理衣の指は既に脈打っている恭二の肉棒を捉え、上下に動かす。先端からは、僅かな精液が溢れている。
「理衣、挿れるよ、理衣の中に……」
 少しだけ息を乱した恭二の声に、小さく頷く。
 指が抜かれ、ゆっくりと侵入される恭二を感じながら、理衣はその身体にしがみついた。
 二人の肉の間からは、理衣の体液が溢れ出す。くぷりという音と共に、恭二が根元まで飲み込まれた。
 きつい締め付けに慣れると、恭二はゆっくりと腰を打ちつけ始める。
「あっ、あっ、恭二…奥にっ…」
 動きに合わせて襲い来る快感。理衣はひたすらそれを受け入れる。
 柔らかく不安定なベッドの上で、しっかりと繋がったままの二人の息遣いがお互いの耳に届く。
「はあっ、はあっ、イク、イッちゃう!」
「理衣、理衣っ!」
 理衣は頭の中が真っ白になるのを感じた。収縮した理衣の中で、恭二もまた絶頂を迎える。
 白い液体を全て吐き出すと、恭二は肉棒を引き抜いて、まだビクビクと身体を震わせたままの理衣の隣に倒れ込んだ。

 目を覚ますと、そこにはもう自分一人しかいなかった。
 手を伸ばし、シーツをまさぐってみるが、そこにはもう温もりすら感じられない。
「あなた、私のことなんて見てないでしょう」
 取り残されたベッドの中で、理衣は一人、声を上げて泣いた。


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