視線の先-3
その眼は、見たこともない怒りに満ちていた。怖くて、歯を立てまいと必死に唇に力を入れる。傘を刺激されて、恭二のそれはますます固く、大きさを増す。
苦味を口内に感じると、ようやく口が解放される。息が詰まりそうに咳き込み、逃れようとうつ伏せになったところにさらに恭二の身体が圧し掛かる。
理衣の下半身が露にされ、準備の整っていない秘部に、後ろから恭二のそそり立った黒いモノがあてがわれる。
「恭二、止めて!お願いだから!」
湿り気が足りず、思うように挿入出来ない。理衣が動くこともあって苛々しながら強引に腰を出すが、定まらない。
「黙れ!」
乾いた音と共に、理衣の白い肌が叩かれる。赤く腫れ上がった皮膚に熱を感じながら、理衣は顔を伏せって泣いた。
動かなくなった秘唇に、こんどこそ挿入する。ひどく擦れて理衣は痛みを感じたが、どこが痛いのかも分からなかった。
「くそ、くそ!」
恭二は激しく腰を打ち付ける。理衣の血が滲んで、シートを汚した。
泣き声が充満する車の中で、恭二の欲望が放たれた。
白濁とした液体の中に、赤いものが混じっている。自分の太ももを流れ落ちるそれを直視することも出来ず、理衣は嗚咽しながら泣いていた。
恭二は理衣にまたがったまま、肩を上下しながら息をついている。汗で湿った髪が、顔にまとわり付いて気持ちが悪い。
「……理衣……」
半ば呆然としながら、恭二が呟く。
組み敷かれたまま、ぐいと肩を引っ張られ、理衣は否応なしに恭二と直面させられる。
そこで見たものは、恭二の涙だった。
やはり涙で顔をぐしゃぐしゃにした理衣は、怒り、驚くが、何も言わない。
「理衣」
恭二はそのままうずくまり、理衣の名を呼び続けた。
「理衣、理衣、理衣……」
そして、頭を抱えながら呟く。
「俺を見ていなかったのは、理衣じゃないか……」
「……私が……?」
ようやく発せられた理衣の声。
「俺は本気だった。どうして分かってくれないんだ……?」
哀願するときの、あの顔よりも子供のように。
ああ、私はこの顔が好きなんだ。
痛む下半身に耐えながら、理衣は身体を起こす。
「恭二……」
理衣がそっと手を伸ばすと、子犬のようにそれを求める。
細い指が、力を失くした恭二の肉棒を撫でる。
「恭二、ごめんね、ごめんね……」
「理衣……」
車体は再び揺れ始めた。日は沈み、欲望を包み込んだまま暗がりの中に取り残されたスポーツカー。そこには飾るものもなく、ただひたすら快楽だけを求め続ける二人の姿があった。
〜Fin〜