感謝と祈り-4
少女は少年から離れると、両腕を広げて空を仰ぎました。
すると、突然強い風が少女たちに吹きつけました。
白い花びらが風に吹かれて、空へと舞い上がっていきます。
花びらたちは月の光を浴び、まるで自らが光っているかの様です。
やがてそれは光の渦となり、少女を照らしだしました。
少女は、光の中心へと歩きだしました。
少年は何故かその場から動くことが出来ず、力一杯少女呼び止めました。
少女は、最後に一度だけ振り向きました。
もう少女には少年の姿を捉えることは出来ません。
しかしそこには、まだ熱く脈打つ少年の命が確かに感じられました。
少女は後悔していました。
あの時守れもしない約束をしなければ、貴方は苦しまずにすんだ。
貴方と一緒にいたい。
貴方を連れていきたい。
だけど、貴方はまだ歌える。
『命』を謳歌出来る。
だから、生きて。
少女は光に呑み込まれ、その命を終えました。
少年は、体の自由がきくことを確かめると、少女がいた場所へと走りました。
そこには、安らかな顔で永遠の眠りについた少女がいました。
やがてその村には教会が建ち、少女の聖母像が奉られました。
今ある全てに感謝して、精一杯命を歌おう。
それは少女の純粋なる祈り