感謝と祈り-2
少女は、感謝をしたくてたまりませんでした。
貧困や戦争、憎悪の念や哀しみなども確かにあるこの世界に。
お金さえ払えば、お金では買えない人の命まで奪う、矛盾と狂気が入り混じった世界に。
少女は祈りを続けました。
少女は咲き誇るこの花達に感謝の意を捧げました。
私達の世界にすばらしい色と素敵な匂い、そして自然と共に生きる大切さを教えて下さり、ありがとうございます。
花達は少女の祈りに応えるかのように、柔らかな風に身を任せてその身体をゆっくりと揺らしていました。
少女は色々なものに感謝し、祈りました。
それは風であったり、雨であったり。雲であったり、星であったり……。
祭壇も教会もない、ただのお花畑で少女は沢山のものに祈りました。
どれぐらい祈っていたのでしょう。月がいよいよ高くなった頃、少女は自分の命がもう無くなることを直感しました。
少女は最後に、今までに巡りあった全ての人々に祈りを捧げました。
お父さん、お母さん。
私を産んでくれてありがとう。
私を育ててくれてありがとう。
私に、面倒を見させてくれてありがとう。
友達のみんな。
私と遊んでくれてありがとう。
私と一緒の時間を過ごしてくれてありがとう。
私と一緒に笑ったり、泣いたりしてくれてありがとう。
少女が最後の祈りを始めようとした時、一人の少年がやって来ました。
少女は、少年と将来を約束していました。それが決して叶わないことと知りながら。
少年がこちらに向かって歩いてきます。
少女は、最後の祈りを始めました。