C金銭欲-2
翌日からは専務への挨拶は軽い口づけに変わり涼子の気持ちも少しづつ麻痺していく。
そして大沼商事との会席の日、料亭に向かうタクシーの中で専務は言った。
「もし、大沼老人のセクハラが目に余るものだったら遠慮せずに席を蹴ったらいいからね。
売り上げも欲しいけど妻となるかも知れない女を泣かせたくないからね。」
「まぁ、またそんな事おっしゃって。私は大丈夫ですよ。」
前回と同じように自分の隣に侍らせ酌を求める。
大沼会長は機嫌よく酒を飲みながら涼子にも勧める。
断ると機嫌を損ねるので涼子も笑顔で酌を受ける。
左手で銚子を持ち右手は涼子の背後に消える。
ここまでは前回も許した事なので涼子も耐える。
健司も涼子がどこまで耐えるか見極めるつもりで冷静に見つめる。
会社ではキスも許してくれるようになったがその先へ突っ込む勇気はなかった。
下手に踏み込んで怒って退職してしまえば計画は頓挫してしまう。
大沼老人の手は涼子のミニタイトのサイドファスナーへ伸びる。
「会長駄目ですよ。」笑顔でやんわり拒否する。
そんな生半可な抵抗に屈する大沼ではない。
何度も何度も手をはねられるが諦めない。
健司はその攻防の成り行きを素知らぬ顔で見ている。
やがてファスナーは下ろされ腰のフックが外された瞬間健司は目をつむった。
涼子の怒りが爆発すると思ったからだ。
だが意外なことに涼子は耐えた。
たださすがに老人の手がショーツの尻肉をつかんだ時は立ち上がって逃げた。
「会長。いけませんわ。」と言いながら専務の隣に戻り着衣の乱れを直す。
会長もご満悦で機嫌よく帰られた。
専務は自宅に帰った後、考え込んでしまった。
あの貞節で頭のいい涼子がなぜ大沼の無礼をあそこまで許したのだろうか。
会社の利益の為?専務の立場をおもんばかった?答えはノーだ。
入社1か月ほどの涼子に愛社精神などあるはずが無い。
自分の収入の為に下着へのタッチまでも許したという事だろう。
涼子の金銭欲は思った以上に強いようだ。
翌日からの朝の挨拶のキスに背中の腕をヒップに持っていくことに躊躇はしなかった。
昨日と同じように「専務。駄目ですよ。」笑顔でやんわりと拒否る。
健司は毎日の出社が楽しくてならない。
愛撫する手は尻から胸へ、時には着衣の下にまで伸びるが順調だ。
「正木君。午後の予定はどうなっている?」
「はい。2時から経理部長と夏の賞与の最終打ち合わせです。」
「そうか。その第3会議室は専務室に変更だ。経理部長にそう伝えてくれ。」
2時たくさんの資料を抱えた経理部長が専務室のドアーをたたく。
主に役員の賞与金額を報告し専務が了解したものには涼子が専務印を捺印した。
涼子は父の賞与の少なさに驚かされた。
終わった後「例の賞与の件、変更はございませんか?」専務の傀儡となった部長が切り出す。
「いや。あの件は300万に臨時賞与も加算して400万に増額してくれ」
「承知いたしました。ここに専務印を押して下さい。」
「いつ振り込まれるのだ。」「はい明後日でございます。」
「これは明らかな社則違反だ。もし社長のチェックでも入れば大変なことになる。
だから捺印はギリギリのタイミングで明日夕方にするよ。」
「はい。かしこまりました。夕方こっそりと専務室迄書類を持ってまいります。」
経理部長が退室した後、「正木君。今日は君も僕も定時に帰れるはずだよね。」と尋ねる。
「いえ。それが先程社長秘書から連絡が入りまして銀座のクラブに来るように仰せつかっております。」
「誰か大事なお客様の接待かな?」
「それが私と社長秘書を含めた4人だけだそうです。」