B大沼老人-1
秘書として専務と行動を共にし少しづつ仕事を覚えていった。
多少の不手際があっても専務は笑って許してくれた。
高給=専務のセクハラを心配していたが大丈夫だった。
充実した毎日で仕事も楽しかった。
「涼子さん。明日の大沼商事との会席は何時だったかな?」
「はい。午後7時に新橋の料亭を予定しております。」
「大沼会長は70歳を超えておられるのだがあっちの方も盛んだそうだ。
店を持たせた愛人を二人も囲い奔放に生きていらっしゃる。
涼子さんも会長の猥談にも笑顔で応じて欲しいんだ。」
「はい。その辺は心得ております。」
「それと商売にはハニートラップの要素も必要だと思うので
会社が支給したスーツを着て来て下さい。」
料亭で待つこと15分くらいで大沼会長が現れる。一人だ。
「会長ご無沙汰しております。今日はお誘いに応じて頂いてありがとうございます。
彼女は秘書の正木と申します。今後とも目を掛けてやってください。」
「初めまして。専務秘書の正木涼子と申します。よろしくお願いします。」
「涼子さんって言うのかい。い〜女だね。年はいくつだい?」
ムッとしたが笑顔で答える。「はい28歳になります。」
「そうかそうか。女盛りの一番いい時だね。結婚はしているのかい?」
それには答えず中居さんに料理の指示を出す。
酒が入ると大沼老人はさらに露骨になる。
「結婚して何年になるんだ。結婚はしているんだろ?」
「はい。4年になります。正確には4年半です。」
「4年半か。じゃ、一番いい時だな。毎晩楽しいだろう?」
柳眉が逆立ちそうになるが、専務の目が我慢しろと言っている。
「いい女に酌してもらうと酒はさらに美味くなるな。こっちへおいで。」
自分の隣を指さす。
涼子は立ち上がって下半身を見られるのが恥かしかった。
このミニタイトでは下半身の肉付きを隠すことは出来ない。
下着もきっちり透かし見られるだろう。
「あっ、はい。でも・・・・・・・・・・」
「正木君。隣で酌して差し上げなさい。」
大沼会長の目は突き刺すように一点に集中する。
「ほ〜う。豊満ないい身体してるね。気に入ったよ。」
「はい。お褒めいただいてありがとうございます。」
「藤代君、今後当社の窓口は正木さんにしてくれ。
その代り売り上げの20%増は約束させてもらうよ。」
帰りのタクシーの中で専務に怒りをぶつける。
「あの人ずっと私のお尻を撫ぜていたんですよ。それも尻肉を掴む様な嫌らしい手つきで。
今後あの人の接待の時は他の方にお願いするわ。」
「すまんな。老人の手の動きは私にも見えていたが売り上げ増の話が出たので阻止できなかった。
でも考えてみろ。大沼商事との年商は5億だ。20%アップは1億円アップになる。
利益は君の年収以上になるんだよ。
法外な高給で雇い入れた私を責める奴も黙らざるを得ないだろう。」
「そうおっしゃって頂けると我慢した甲斐があるというものです。
ハニートラップ的な商いの意味が今わかりました。」
「じゃ、私はここで降りるがよければ私の部屋で飲み直さないか?」
「いえ。老人のお守りで疲れました。父も心配しているのでこのまま帰ります。」
専務からタクシーチケットを受け取ってそのままタクシーを走らせる。