地上の朝顔-5
「またいらして下さい。ケーキ用意しときますから」
「よう食わんと云ったがね」
「甘いものはお好きでしょう?本当に美味しいんです」
「なら頼むよ」
笑って、谷町家を出る。健吾に駅まで送ってもらって、電車に乗る。
車窓から街を見る。
大分変わったが、人々はそうは変わらない。
不幸も、幸せも。
健吾が真っ直ぐに育った事が酒井の救いだ。
彼は人々を助けているのだから。
今度会う時にはケーキを食べるのも良いかも知れない。
彼と食べるケーキは旨そうだ―――そう思って、酒井は目を閉じた。
この瞬間に起こる手遅れが、一つでも減るようにと祈って。