I三浦麻子アナ-1
「これ、小さくて可愛いでしょ。でもシロアリやネズミには効かないんですけどお屋敷にそんなものいないから
これで十分でしょう。」と言って昨日の五分の一位の大きさの害虫駆除機をコンセントに差し込んだ。
「うん。これの方が可愛くていいよ。昨日のはどうしてあんなに大きかったの?」
「えっ、まぁ、いろんな装備が内蔵されていたからね。」笑って話を逸らす。
「で、今日、本当に三浦アナ来るんですか?」
「そうよ。あの娘は早慶大学の4年後輩で同じテレビ局だったの。ミスコンに選ばれたの迄私と同じ経過なのよ。」
「へー美人でインテリ、そして人気があるのまで高島綾子アナと一緒ですね。」
「こんど私の出ているクイズ番組でペアを組むの。それで今日はその勉強会なのよ。」
放送局もさすがに問題までは教えてくれないが綾子の顔でジャンルだけは教えているようだ。
部屋がノックされ三浦麻子アナが現れた。テレビで見るより大柄だと思った。
ベージュのアウター、くるぶしまでの細身のジーンズ、何気ない普段着だがテレビで見るスーツ姿よりセクシーだ。
上着を脱いだ。ノースリーブの黒のセーターは胸の豊満さを隠せない。
「私たちリビングに移動するわ。和樹も作業が終わったらいらっしゃい。」
「奥様鉢植えの剪定は終わりました。道具を片付けたらそのまま失礼いたします。」
「そう。ご苦労さん。今日は雅子の体調が悪くて休んでいるのよ。コンビニまで行って酒の肴買ってきてくれない。」
「ええいいですけど・・・・それよりなんかお作りしましょうか。」と言って冷蔵庫を開ける。
簡単にできる酒の肴レシピを脳の引き出しから取り出す。
フライパンでできる揚げ出し豆腐を作って見せた。
「うん。美味しい。和樹は何でも出来るのね。」
三浦アナも舌鼓を打っている。
その間にツナ缶ときゅうりもみのマヨネーズ和えを出し、さらにウィンナーを炒め始める。
「それが出来たら和樹もここに来て一緒に飲みなさい。」
「あっ、はい。わかりました。」ちらっと三浦アナの顔色を伺う。
笑顔でうなづいている。
ソファーの端っこに小さくなって腰かけた。
「植木職人のくせにお料理も上手じゃないの。経験あるの?」
「いえ、中学を出てすぐ今の植木の仕事をしてますのでそんな経験はありません。」
「へーそうなんだ。私中卒の子って初めて出会ったわ。世の中にはそんな子っているのね。」
明らかな軽蔑のまなざしで和樹を見下す。
「次の問題って答えは中国ね。なんか易しすぎだわ。」
「なになに、次の生産量No1をヒントに国名を答えなさいか。@キウイAホップBにらCトマト。
そうね。たしかキウイとトマトの生産量は中国が世界一だわ。きっとホップとにらもそうじやないかな?」
「じゃ次の問題にいくね。次の世界文化遺産を認定順に並べよ。だって!」
「ちょっと君、和樹君って言ったかしら。何がおかしいの。」
「だってさっきの生産量の問題ひっかけ問題だよ。生産量世界一と言わないでNo1っておかしいよ。
それに確かにキウイ、にら、トマトの生産量世界一は中国だけどホップはエチオピアだよ。
この答えは中国じゃなくてイギリスだよ。」
「ど、どうしてイギリスなのよ。いい加減なこと言わないで!」
「へーここまでヒント貰っても分からないんだ。早慶大学って意外と偏差値低いんだね。」
さっきの中卒を馬鹿にされたブーメランとばかりに軽蔑の言葉を吐く。
「これは生産量日本一だよ。順に愛媛、岩手、高知、熊本。この四県の頭の文字を並べると え・い・こ・く
すなわち答えは英国イギリスだよ。」
「そうね。和樹の言う通りだわ。でも和樹どうしてそんなこと知ってるの?」
「僕は一度頭に入ったことは絶対に忘れないんだ。だから小、中学校の教科書はすべて覚えているし
テレビやネットから得た情報もすべて覚えているんだ。」
悔しそうな目を向けながら「じゃ、この問題わかる?」二人が解けなかった問題を矢継ぎ早に出してくる。
「へー三浦さん聡明そうな美人なのにこんな事も知らないんだ。」と軽蔑しながらそのすべてに答える。
「馬鹿にしないで。でも君の頭の良さは認めざるを得ないわね。」
「でもこの子、女の子に関しては小学生並なのだから世の中分からないものね。」
「えっ、それってどういう事?」さんざん馬鹿にされた麻子が食いつく。
「いえね、この子好きな女の子の前に出ると緊張して喋れなくなるのよ。」
「でも私たちとは普通に話しているわよ。」
「和樹が言うには自分の手が届かないところにいる女子には平気で話せるらしいの。
この子にとって三浦アナは雲の上の高嶺の花だから普通に喋れるのだわ。」
「それじゃ好きな女の子と恋愛も出来ないじゃないのよ。」
「そうなのだから18歳にもなって彼女いない歴18年だそうよ。」
昨日打ち合わせした通りだ。
「麻子は勘の鋭い子だから私たちの事感づかれたら駄目よ。
馴れ馴れしい態度は厳禁だからね。くれぐれも注意してね。」
「綾子さんも出来てる男女ってなんとなく感じた事あるでしょう。あれって以心伝心分かるものですよ。」
「じゃ、和樹は明日作業が終わったらすぐ帰ってね。」
「そうするよ。でも感ずかれそうになったら僕のこと彼女いない歴18年だって言えばいいよ。」
「私や女将さんとのことを隠して、よく言うわね。」
「そうして童貞だと思ってくれたら彼女の勘も鈍るっていうものさ。」
さんざん自分を軽蔑した相手の弱点を見つけた時の女は残虐だ。
「色んな知識を持っていても童貞じゃ男の値打ちは半減ね。」「・・・・・・・・」
「そうだよね。18歳て自分では一人前だと思う年ごろね。」「・・・・・・・・」
そう言って馬鹿にしながら男に対する防御壁が弱まっていくのに気付いていない。
そうこれは心理学に秀でた和樹が綾子を使った巧妙な手口なのだ。