死神花嫁1死が二人を分かつまで-1
カラスの鳴き声が聞こえる
何故かは知らないけど、趣を感じる
多分、死が迫ってるから……
俺は殺される
それは覆らない決定事項であり、変わりようのない未来
俺は殺される
俺の妻になった人に……
「ただいま」
「おかえり!」
明るい声が俺を出迎える
昨日まで恋人だった俺の妻、優衣
幼い顔立ちだが、もう24歳だ
「ほら、頼まれたの買って来た
きゅうりとタマネギ……だよな?」
「うん!ありがと!」
チュと頬にお礼のキスをくれた
昨日までの俺ならば、顔がだらしなく緩んでいただろう
だが、今の俺は何も感じない
この小さな死神が考えている事の恐ろしさに震えるだけで精一杯だ
『私は貴方を殺すためだけに生まれたの……』
冷たい瞳をした彼女が言った一言
一晩経ったのに、今も耳にこびりついている
誰か
誰か
誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か
助けて
助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて
無駄だ
少ない理性がそう告げる
分かっている
助からない
だって彼女は……
いやもう良いか
今は今を生きるしか道がない
朝が来た
何故だろう
何一つ感じない
数日前まで希望に満ち溢れていたのに……
夜の間も何一つ感じなかった
となりで眠る優衣
邪気の無い顔をしている……だからこそ恐い
俺を殺す事に罪を感じないんだろう
「ま、良いか」
今を生きるしか道はない
気にしたら負けだ
もしかしたら――があるかもしれんしな
仕事して気分を晴らす
これが一番
「絶対にコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス」
会社行こ
家の中に居ると、命の危機を如実に感じる
彼女は普通に振る舞っているが、安心出来ない
知らぬが仏とはこの事だ
前は感じ得なかった殺気が俺を襲う