小学生の顔画像を見て 〜琴音11歳、梨央12歳、真理子12歳〜-1
5月の晴れた陽射しが校庭に降りそそぐ。3階建てのクリーム色の校舎は、初夏と言ってもいい太陽の光と、小学生たちやその父兄たちの歓声を反射している。
小学校の校庭では、今年度の運動会が活況を呈していた。
全国的な傾向のご多分に漏れず、うちの市内の小中学校でもだいぶ以前から5月のゴールデンウィーク明けに運動会をスケジュールしていた。スポーツの日と市政記念日−記念行事が大々的に行われる−が近接するため、教員を含めた公務員の負荷を減らすために運動会の日程を移動させたらしい。
それは、小学校の嘱託カメラマンを務める俺にとって、極めて好都合だった。10月よりも5月のほうが快晴の日になる可能性が高く、被写体がより明るいほうが写りがくっきりしていい写真になるからだ。まぁ、それはどんなカメラマンも同じように思うだろうけど。
運動会でのカメラマンの仕事はだいたい決まっている。開会式や閉会式の全体写真、主に開会式の校長や主賓によるあいさつの様子、そして各種目の競技の様子−徒競走でコーナーを疾走する児童や、玉入れで年甲斐もなくはしゃぐ教員、などなど−を偏りなく撮影する。主な目的は学級新聞やその年度の卒業アルバムへの掲載だから、各学年の全クラスをまんべんなく抑えて要件定義を満たしておけば、まず職員室から文句は言われない。
それに加えて、俺は学校に「サービス」を申し出ていた。教員や児童のスナップ写真だ。最近の父兄はスマートフォンのカメラでアホみたいに自分の子供の写真を撮るから、児童個別の写真は元来俺の担当範囲じゃない。だが俺は嘱託を受けたときに教頭に、全員分は保証できないが可能な範囲でスナップも撮りますよ、と提案した。スマホのバッテリーが切れた父兄さんもいらっしゃるでしょうし、万一芸術クラスの写真が取れたら校長先生か教頭先生のお名前で市のコンテストに出してもいいし。もちろん、先日のお見積りの範囲でやらせていただきます。私も貴校の卒業生ですし、恩返しの意味で。
教頭は苦笑いして、コンテストはともかく条件が許せばどんどん撮ってやってください、と言った。遠足の様子なんか見ていると、子どもたちは写真撮られるのを結構喜びますしね。
俺はにっこり笑った。よいビジネスが成立した。これで、趣味と実益を兼ねてシャッターが押せる。
要件定義の80%くらいは午前中で撮り終わる。昼食を挟んで、午後は全学年対抗綱引きと高学年のリレーがメイン競技だ。
俺は、まず綱引きの準備で各クラスごとに集合している児童たちを運営本部テントから望遠で追った。校庭の反対側に集合している低学年、正門に近い右奥寄りに固まっている中学年を高望遠レンズで抑え、そこで愛機のレンズを標準ズームに交換した。テント付近に集合する高学年を撮影するためだ。
テントから比較的遠目の5年生を順番に撮影し、6年生に移る。1組、2組と順にテントに近づいてくる。テントのいちばん近くにいる6年4組は、標準距離で全体が入る。少しのズームで、ひとりひとりの全身像を個別に収めることができる。
俺はクラス全体を撮ると、50mmくらいにレンズを伸ばした。ファインダー越しに三人を探す。三人とは、6年4組の奇跡の三人のことだ。俺が勝手にそう読んでいるだけだが、内角も外角もいける俺にとって、ストライクゾーンを広く取って球種を投げ分けてくれる三人が見事に揃ったのはこのクラスだけなので、奇跡の三人以外何者でもない。
三人は、離れて立っているけれど、他の児童と密接していない。両腕が、まっすぐ下ろせば隣の子と重なったりしない。男子も側にいない。よしよしいいぞ、まず全身像は狙いどおりいけるな。
最初にレンズを向けたのは琴音。すらりと背が高く−たぶん160cmくらい−、小麦色に陽焼けした身体にショートカットの髪がよく似合う。細身で、太腿なんか俺の腕くらいしかなさそうだ。そして、もちろん胸のふくらみはほとんど目立たない。
俺は、カメラを縦に構えて琴音の全身をファインダーに収め、琴音が正面を向いたときに1/50でシャッターを切った。焦点距離とシャッター速度の数値を合わせておくと、よりブレのない鮮明な写真になる。今日は明るいし、ISO感度も低く設定できるから、かなりカリカリの画像になるだろう。
琴音が体ごと真横を向いた。すかさずシャッターを切る。ここはバストショットだ。琴音の胸は、真横から見るとほぼぺったんこだ。
琴音のふたり隣に梨央がいる。琴音より頭ふたつ小さくて、標準体型よりやや肉付きがいい。そして、琴音と対照的に胸のふくらみも目立つ。体操着の胸に書かれた名前が、軽く盛り上がって見える。
梨央も、琴音ほどではないにせよ、今日の太陽のせいか肌が蜂蜜色程度には焼けている。陽射しを反射して明るく輝く太腿は、琴音よりも肉感的だ。落ち着きのない性格なのか、ときどき足がもじもじと動いて太腿の肉が揺れる。
梨央の履いている紺色のハーフパンツは、中学年の頃から使い続けているのか、サイズが梨央の体型に合っていない。だから、梨央が横を向くと、ちょっとむっちりとした尻肉のワレメがハーフパンツに食い込んでいるのが見える。おお、これはもうけた、梨央ナイスプレーだよ。