1:1:1〜豊田早将〜-1
転校してきた郡司佐和を見た瞬間、単純な俺は恋に落ちましたとさ。
その日から、親友・成将と俺と佐和の3人でバカする日々が始まった。
3人で居ると楽しくて、男女関係なく俺らはいつも対等で
ずっとこの関係が続けばいいなと思ったり
佐和とラブラブカップルになりたいと思ったり
青春真っ盛りの俺の気持ちは、移ろいやすかった。
学祭1日目。
お祭り気分で盛り上がる学内。
そのどこかにある小さな教室で、親友2人が重大な話をしているなんて俺は知る由もなかった。
俺たちの関係が大きく変わろうとしている時、俺はただ夢中で焼そばを焼いていた。
「柴山〜チェンジチェンジ!俺、昼飯食いいくさ☆」
俺は前掛けを柴山に投げ付けると、佐和達を探すためルンルン気分で走っていった。
俺は明日の夜・後夜祭の時、佐和に告ろうと決めていた。
それは成将にだけ打ち明けた事実。
気の利いた愛の言葉を考えたが、如何せん頭が悪いものだから一向に思いつかなかった。
たこ焼きを他の模擬店で買って俺は学内を走り回る。
「成ぃ〜!!佐和ぁ〜!!」
廊下を歩く2人を見つけると、俺はたこ焼きの袋をブンブン振り回して駆け寄った。
「なんか食った?」
「…別に」
いつもの無表情で成将。
「何?たこ焼き?」
いつもの笑顔で佐和。
「一緒に食おうぜ☆爪楊枝も3個もらってきたし」
「おぉ〜。気が利くじゃん早ぁ〜」
「恐縮です」
俺は某お笑い芸人の真似をして頭を掻いてみせた。
「俺つぎ当番だから行くわ」
しゃがみこんで俺と佐和はたこ焼きを広げようとしたが、成の言葉に手がとまる。
「まじで?せめて食ってからにすれば?」
「いー。店のもんツマみまくる」
後ろ姿の成は、手をヒラヒラさせて去っていった。
「じゃ佐和、食うべ〜♪」
俺は袋からパックを取出し開ける。
ソースと鰹節と香ばしい匂いと…開けただけでたこ焼きを食べた気分になった。
「いっただき〜」
ぱくりと口に頬張る。
少し時間が経ったため、程よい熱さでおいしく食べられた。
「うめぇ〜〜!やるな1年!!佐和も食ってみ?」
俺はもう一つ爪楊枝を手に取ると、「あ〜ん」と言いながら佐和にたこ焼きを差し出した。
「やめてよ早〜」
困った風に笑う佐和は可愛くて、俺の胸は脈打つ。
あぁ…
今 気持ちをぶつけても良いだろうか…
佐和の笑顔を前に、溢れそうな気持ちを押さえ付けられなくなる。
「佐和…あのさ、俺……」
その時――…
「……佐和?」
笑う佐和の口元がだんだん下がってくる。
俺はたこ焼き片手に驚きの表情で佐和を見つめた。
そしてついに
その円らな瞳から
一粒涙がこぼれた…。
あとは堰を切ったように涙を流しつづける。