「私」に関する幾つかの考察2-1
糸が絡まっている。
些細な糸だ。
私はそんな糸など意識の外へ掃ってしまおうとしている。
既に私は掃い去ってしまったものと思っているようだ。
しかしふと視線をあてた処に糸をみとめ、私は訝しむ。
――太さや色は違いこそすれ、これは同じ糸だ。
些末である筈の糸に敏感に怖気づくことが私の本能でさえあるようだ。
蜘蛛の巣さえ形作れぬ糸に何が出来よう。
私は虚勢を張って私を鼓舞することを試みる。
それでも目の前にしたドアノブの糸を掃うことはできないようである。
――お前は同じ糸に絡み取られて先に進めぬ。
要の扉を開けられないのは糸ゆえか。
理由付けることは安易なことである。