「私」に関する幾つかの考察1-1
私は爪を切っている。
自らを傷つけないためだ。
私はさして伸びてもいない爪を切っている。
既に負った傷を深傷にしないためだ。
――傷に触れてはいけない。
注意の及ぶ時間は、私の思うよりもずっと短い間でしかない。
知らず知らず、私は触れてはいけない筈の傷に爪を立てているようだ。
注意のしようのない被害を最小限に食い止めるべく、丁寧に白を失うまで爪をやすっている。
それが私の、私を傷つけないための方法であるようだ。
私はその行為に、これ以上傷つくことがないようにという祈りの中で没頭する。
渇望するは痛みの伴わぬ目覚め。