one-sided love*start*-1
平成16年4月10日、東京都内
【楠高等学校入学式】
―――「お母さん!!早くしないと間に合わないよっっ!!」
ただ今の時刻、8時15分。ウチから楠高校まで、チャリでどんだけ飛ばしても20分はかかる。
…この親が、飛ばして…は、くれないだろう。
入学式開始時刻は…8:30……完全に、遅刻だ……。
もう嫌だ。泣きたくなる。こんな母親。
「ねぇ〜、ハユル?どれがイイかしらぁ?」
もう40分。このアマが鏡の前につっ立ってから経過した時間だ。
これじゃあ、昨晩8時就寝、今朝6時起床した意味が……(泣)
初日から遅刻、最悪の展開…。新しい友達も、引いていきそうな予感…。
全てがマイナー思考。もう…涙出てきそうだ…。
「母さん、早くしねぇとハユ泣く…」
頭上から声。
2階から、降りて来た男。
身長186cm、体重56kg、程よく筋肉のついた引き締まった体に、ピンクのタンクトップが似合うこの男…。
「にっ、兄やぁん!」
たっ、助けだぁ!!
「あらチユル!起きたの?早いじゃないのお。」
なぁにが、早いじゃないのお。だぁ!40分も鏡の前に立ってたくせに!!
「ハユルがうるさいから…」
冷たい目でアタシを見る人間。アンタのイヤリングのせいだろが!!
そんなバカ(親)を無視して、
「ハユ、俺が送ったるから…」
…え?!
だっ、だだだだ、大好き!!大好きよ、兄やん!!アナタは神よ!!
「兄やん…!」
「ハユ、遅れちゃうよ…」
アタシの手を引いて、車庫に向かう兄や。
その瞬間だった。
手を繋いだだけ。いつものコトでしょ?
でも…なんか…いつもより、ドキドキする。
相手は兄やん…。
有り得ん。さっきからイライラしっ放しだったから、感情が高ぶってんのかな?!