パン焼き虜囚娘と隣人たち-2
3
「はい。この方程式の計算」
眼鏡をかけたミレーユ先生、少年兵たちを相手に「学校ごっこ」。パン焼きの合間の時間に、二十分くらいの短いお話をする。計算だったり、当たり障りない理科や簡単な歴史の知識だったりするが、一日に二回や三回は話す余裕がある。
これはミレーユ自身の人間的であることへの執着やプライドで、自分自身に課したノルマでもあった。ここのパン焼き場の責任者のナセルは面白がって、お情けで彼女の好きにやらせている。「ちょっとは勉強させといてもいい」などと言って。
「やります」
「どうぞ」
手渡されたマジックで、少年の一人がホワイトボードに計算する。一次方程式を一問ずつ、合計で三題。これは昨日の復習問題だった。
「今日は、連立方程式。わからない数字が二つあって、代わりにヒントになる式も二つあるの」
しばしばゲリラたちは「家族」を否定している。兵士構成員たちが妻子を持てば、その愛情が原因で逃亡や投降する原因にもなる。そもそも人間的な感情を持ちすぎれば凶暴性が低下してしまう。
また、赤ん坊や幼児を育てるのは手間がかかるから、強姦で妊娠させた妊婦を村に捨ててきたり(それによって「上下関係を思い知らせる」「恐怖と屈辱を与えて敵の負担を増やす」などと言って)、赤ん坊をブラックマーケットに売りとばしたり。
代わりに十歳を過ぎた年頃の少年を誘拐してきて、盗賊ゲリラの新兵にして、育児の手間を省くのだ。
少年たちがミレーユや女性に近寄りたがるのは、ただ単に性欲だけというより、寂しさやマザーコンプレックスの心理もあるのだろう。彼女からすれば母性本能なのかもしれなかった。ゲリラたちも、そういう女どもと少年兵たちの関わりは大部分が黙認されている。
それにここには、教育もろくにない。
州軍閥の配布する古い書籍データや再版印刷本が好きなミレーユからすれば、あり得ない。だから彼女なりの、人間としての抵抗であった。
でも。
「こら!」
行き違いざまに、ヒップを叩いた少年の一人を、ちょっと睨んで叱る。
こいつらだって、あいにくの思春期だった。パンを捏ねているときなどに、背後から抱きつかれ、幼根の突起にびっくりすることもある。ナセルも仕事の内容として、勤務中には「ご法度」としているのだ(誰だって、精液や愛液で臭いパンなんて嫌だろう)。
だから、作業終了後はちょっと修羅場になる。
よくミレーユは「女は子宮で考えるなどと言うが、男だって胃袋とペニスや睾丸で生きている」とさえ思う。このガキどもも例外ではない。その願望を逆手にとって、無理矢理でも短い授業で、多少とも最低限の知識を教えようとする。
きっと心の中で、「完全に盗賊ゲリラになってしまう前に、村人側に戻したい」と思っている自覚はある。難しいとは思っても、捕獲されたりでそういうことも少なくないから、少しでもその可能性を増やしたかった。完全にバカで凶暴なだけになってしまったら、チャンスがあっても村人側に投降せずに逃げるようになってしまう。
4
やがて作業が終わる。まだ夜には時間があるし、そもそも今晩のノルマはない休暇だ。
ミレーユは少年たちに囲まれた。飢えた眼差し。一丁前に男の欲情の目。やっぱり相手にせずに逃げるわけにはいかない。授業ごっこの調子で、ご褒美することにしている。どうせ拒否したところで自分や他の女を集団強姦するようになるだけ。
今日は彼らも頑張ったから。
ミレーユは後ろを向いて、シャツを脱いだ。下着まで落として、素っ裸になる。それから仮眠用の簡易ベッドに半ば寝転んだ。
「乱暴なのはダメだからね」
少年たちの手とペニスが、いっぺんに六人。
体中をまさぐられ、雄性器を押しつけられる。早くも左胸にめり込んだ可愛らしい亀頭が吐精している。それを口に含んで、チュッチュと吸ってやる。まだ皮もむけきっていないくせに。
誰かが牝花を舐め、もう一人は右の乳首に吸いついている。釣り鐘のようなバストのラインが、無骨な大人の手とは違う少年の手のひらで捏ね潰される。
「うっ」
さすがにクリトリスをペロペロと舐められると、腰が弾んでしまう。小さな男の子たちは、そんな二十歳の女先生の様子にキャッキャしていた。
「良かった?」
「・・・」
返事しかねるミレーユの肛門を、細い指が撫でる。背筋がゾクリとして、つい吐息が乱れてしまう。
ゆっくりと膝を開いて、受け入れる準備をする。どうせ一度で収まらない困ったワルガキどもなのだった。「先生泣かせ」もいいところである。