5日目-27
それは…もしかして…
「お兄ちゃん覚えてる?お兄ちゃんのお友達だった早川和裕。わたし、その妹なの」
「ちょっと待ってよ!おかしいよ。それなら、ももちゃんは30歳を過ぎてるはずだよ!どう見ても…」
ももちゃんの話しは、僕の予想を遥かに越えたものだった。
僕が早川桃香ちゃんに初めて会ったのは、小学四年の時だった。
僕は10歳、彼女は8歳だった。
桃香ちゃんは、生まれつき難病を抱えていた。ほとんど学校にも行けず、家で寝ている事が多かった。
その日は体調が安定していて、彼女はベッドから起き出していた。
思い出した。
前に見た夢は、忘れていた僕の記憶そのものだった。
和裕君の妹は、可愛いけど、あまりしゃべらない、おとなしい子だった。ただ、僕は彼女の病気の事は一切聞かされてなかった。
初めて会った時から、桃香ちゃんは密かに僕に惹かれた。
家族以外の人に会う事はあまりなかったから、余計に強く感じたのだろう。
そういえば和裕君とは、なぜかいつも彼の家で遊んでいた。僕が、たまには外で遊ぼうと言っても和裕君は、新しいゲームがあるからとか言って、家に誘っていた。
おそらく彼は、妹の幼い恋心を察して、僕と桃香ちゃんが会う機会を増やそうとしていたのだろう。
桃香ちゃんの僕への想いは、日を追うごとに強くなっていった。
「耕平お兄ちゃんは、いつもわたしに優しくしてくれた。わたしね、いつも耕平お兄ちゃんの事ばかり考えてたの」
僕自身は、特に彼女を意識してはいなかった。ただの『友達の妹』にすぎず、なぜ一緒に遊ぶのか不思議だった。
「耕平お兄ちゃんと遊んでいる時は、本当に楽しかった。生まれてからずっと楽しい事なんてなかったから。病気の事も忘れられたの」