5日目-25
それは純白のウェディングドレスだった。
かなり本格的だ。ベールやブーケ、手袋も付いている。エッチのコスプレ用だから、スカートの丈は極端に短いが…
「ももちゃん、着てみたい?」
「でも…わたしなんか、似合わないよ」
「そんな事ないよ!絶対可愛いよ!」
お世辞ではなく、本心からそう思った。
「じゃあ、お兄ちゃんも着て」
見ると、男性用に白いモーニングもあった。
「わたしね、結婚式したい」
「今ここで?」
「ホントの結婚式じゃないけど、したいの」
やっぱり、そういうのは女の子の憧れなんだろう。
「うん、いいよ。ふたりだけの結婚式しよう」
部屋に衣装が届いた。
「お兄ちゃん、あっち向いてて」
僕はももちゃんに背を向けて、自分の衣装を着た。
「いいよ」
ももちゃんの声に振り返ると…
「どう…かな?」
そこには世界一可愛い花嫁がいた。
ベールを被った清楚な笑顔は、天使そのものだ。色とりどりのブーケが、ももちゃんの可憐さを引き立てていた。
短いスカート丈も、小さいももちゃんには丁度良かった。
やや暗めのラブホの部屋で、ももちゃんの姿は輝いていた。
いや、もう可愛いとか綺麗とか、そんなありきたりの言葉では言い表せない。
僕は自然に彼女の手を取り、レースの手袋越しにキスをした。
ももちゃんは照れくさそうに笑った。
「なんか…恥ずかしいね。やっぱり似合わないよ」
「そんな事ない。世界中に自慢できる花嫁さんだよ」
「お兄ちゃん…」
「結婚式、しようか」
部屋の壁にある大きな姿見に向かって並んだ。
鏡の中に、薄っぺらいナイロンのモーニングを着た冴えない新郎がいた。その横にいる新婦は、あまりにも可憐で小さい。ちょっと緊張してるようだ。
ももちゃんも、あと4年で本当に結婚できる歳になる。その時は、きちんとプロポーズして真の夫婦に…などと勝手な妄想をしていた。