5日目-22
それは僕にとっては朗報だ。この先ずっと一緒にいてもいいという意味で。
でも、そんな境遇にあるももちゃんを思うと、それどころではない。
親からも必要とされない、愛されない子供。それがどれだけ悲しい事か…
全然大丈夫じゃないよ…僕は目頭が熱くなった。
「あれ?泣いてるの?」
ももちゃんが言った。僕は少女をさらにきつく抱きしめた。
「おにいちゃん、痛いよ」
「ももちゃんの帰る場所はね、僕のところだよ…」
「うん…そうだよね…ありがとう…」
その時の僕はまだ知らなかった。
ももちゃんの言葉に込められた、本当の意味を。
その後、ふたりはビーチに戻った。
ももちゃんはまた清純な子供に戻って、無邪気に僕と遊んだ。そのギャップもまた、愛おしかった。
辺りが暗くなると、浜辺で花火をした。
暗闇の中、花火の鋭い光に照らされた、ももちゃんの笑顔。
もう二度と、この笑顔を曇らせる事はしないと誓った。
夕食を済ませると、また車を走らせた。
今夜はどこで寝ようか。
あの温泉旅館は、一泊しか予約が取れなかった。今からアパートまで帰るのは遅すぎる…などと考えていると、ももちゃんが嬉しそうに言った。
「あっ!お城だ!」
「えっ?」
窓越しに見えたのは、たしかにヨーロッパの城のような建物。
「キレイ…」
ももちゃんは、うっとりしていた。でもあれは…
「ももちゃん、あれはラブホテルだよ」