5日目-16
しばらく遊んだ後、ビーチパラソルの下で、昼食を食べた。
「ももちゃんって、ホント、肌白いよね」
ももちゃんはハンバーガーを頬張っていた。
「そうかな…どうして?」
「いや、子供って、夏になるとみんな日焼けしてるから」
「みんなじゃないよ。わたし、あまり外に出ないし」
「そうなんだ…」
やっぱり、本当は内向的な子なのかな。イマジナリーフレンドと会話してるし。
友達とか、いないのか…
僕はふと海を見た。
沖の方、数百メートル向こうに、防波堤が延びている。それは一部を除いて、海水浴場全体を、ほぼ覆っていた。
高波避けのため仕方ないのだろうが、おかげで水平線がほとんど見えない。
「ねえ、ももちゃん。あの向こうに行ってみようか」
僕は防波堤を指差した。
ももちゃんは、戸惑っていた。
「えっ?遠いよ」
「大丈夫、あれくらい泳いでいけるよ」
「でもわたし、泳げないし…」
「僕が連れていってあげる。きっともっと綺麗だよ。それとも、怖い?」
「お兄ちゃんと一緒なら平気だよ!」
「決まりだね」
僕は波打ち際に浮き輪を浮かべた。
ももちゃんを抱きかかえて、小さなお尻を浮き輪にはめた。
「きもちいい!フワフワしてる!」
防波堤に上がる事を想定して、バスタオルを浮き輪のロープに縛り付けた。
「よし、出発だ」
そして沖へと向かった。
海は次第に深くなり、僕はももちゃんの浮き輪を引きながら泳いでいた。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「まだまだ、全然いけるよ」
「離さないでね」
「死んでも離さない」
「やだ…死ぬなんて言わないで…」
なぜか、ももちゃんはその言葉に敏感なようだ。身内に不幸でもあったのかな。