4日目-7
ももちゃんが出て来た。浴衣姿だ。もちろん旅館の浴衣なので、簡素なもので、カラフルでもないが。
やっぱり、何を着ても可愛い。
洗い立ての髪をおろして、ほんのりピンクに染まった顔が、艶かしい。
「お兄ちゃん、待った?」
「ちょっとだけ。ももちゃん、浴衣似合うね。なんか色っぽいよ」
「え?そうかな…」
「とりあえず部屋に戻ろうか。もうすぐご飯だよ」
「うん!」
食事処で夕食を食べた。会席料理だった。
たしかに美味しかったが、僕はこれからする事を考えると、食事どころではなかった。
「なにこれ?よくわかんないけど、おいしい!こんなの初めて。お兄ちゃん、これ何?」
ももちゃんは、いつもと変わらず美味しそうに、ニコニコして食べていた。
やっぱり、意識してないのかな…よくわからない。
部屋に戻ると、すでに布団が敷いてあった。
食事の間に布団の用意をするのは、旅館では当たり前だ。
でも、ももちゃんはそれを見てちょっと緊張したようだった。
ももちゃんは布団に座って、僕も座り、向かい合った。
彼女は、うつむいて、しばらく無言だった。
こんな彼女は初めて見た。
ようやく口を開いた。
「お兄ちゃん、わたし、子供っぽいよね?」
「え?」
急に何を言い出すんだ?子供だから当然だろう?いや、そういう意味じゃないな。
「わたしもう12歳なのに、こんなに小さいし…しゃべり方も7歳の子みたいだって…」
「誰かに言われたの?」
ももちゃんは、小さくうなずいた。
純真な彼女にも、心の傷があるのだろう。
僕には子供いないから比較できないが…12歳にしては、発育が遅いという事か。