3日目-2
会社に向かう車の中で、僕は考えていた。
ももちゃんは、ケータイを持っていない…
僕の部屋には電話はない。僕のケータイだけだ。
それなら、昨日話していたのは、独り言か?それとも…
『イマジナリーフレンド』というのが、あるらしい。孤独な子供が空想の友達を作って、ひとりで会話する現象だ。
普通はもっと小さい幼児に起こることらしいが…
ももちゃんはそんなに、寂しい子供なのか?
友達もいない…親から充分な愛情も受けられない…?
そもそも亮は、娘に300万も持たせる程、経済的余裕があるのに、ケータイを買い与えないのか?
僕が親なら心配で、絶対持たせる。
だって知らない家に、娘ひとりで行かせるんだぞ。いつも連絡取れるようにするのが普通だろ?
連絡を取る気がない。
迎えに行くつもりも、呼び戻すつもりもない?まさか…
亮の手紙…『君にしか頼めないんだ。娘の事、よろしく頼む』…
何を頼むんだ?
『お父さんの家は?仕事は?』『話しちゃダメって、お父さんに言われてる』
亮は、娘を捨てる気か?
ももちゃんは、それを知ってるのか?
でもそんな事、本人には聞けない…
これは、警察にでも行くべき事件かもしれない…
いや…
それならそれで、別に構わない。
その時僕が感じた素直な気持ちは、娘を捨てる亮に対する憤りでも、ももちゃんを憐れむ気持ちでもなく…
彼女とずっと一緒にいられるかもしれない、喜びだった。
もう、自分に嘘つくのは、やめよう。
気付いたんだ。
僕は…ももちゃんが好きだ。