2日目-4
アパートに帰ったのは、夜8時頃だった。ちょっと遅くなってしまった。
車から降りた時、ふと心配になった。
ももちゃんは、まだいてくれるだろうか…
彼女は突然やって来た。だから突然いなくなるような気がした。
誘拐されるとか、そんな事だけじゃなくて…
例えば僕よりも、もっと相応しい預り先が見つかって、そちらに移ってるとか…
もちろん、ももちゃんのためには、その方がいいに決まってる。忘れるな、あの子は親戚の子だぞ。僕の気持ちなんて、どうでもいいんだ。
だけど…
部屋のドアの前に立つと、中から微かに声が聞こえてきた。ももちゃんの声だ。ホッとした。
しかし、なぜか気になって、ドアに耳を押し当てた。
「………うん……そう思うよね……だから、わたしね………そう……………いいかな……ありがとう……」
誰かと、電話で話してる?
お父さんか、お母さんかな。別に気にする事じゃない。
ドアは、ロックされてなかった。
「ただいま」
ドアを開けた。
「おかえりなさい!」
ももちゃんは、元気よく出迎えてくれた。
「遅くなってごめんね。お腹減ったよね」
「ううん、大丈夫。いっぱいお腹減るとね、ごはんがもっとおいしくなるから」
ももちゃんは、ニコニコして文句も言わない。
「ところでももちゃん、部屋のカギ掛けてなかったよ」
「えっ?カギしないとダメ?」
「だめだよ!危ないよ。変な奴が来たらどうするの?」
「心配してくれるの?お兄ちゃん、優しいね」
「いや、普通だよ」
部屋は、ももちゃんの予告通り、綺麗に片付いていた。掃除が苦手な僕には感動ものだ。