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惨酷メカ:バーチャル・カプリコン、と芋掘りレジスタンス村娘(ケータイSF愚弄小説・18禁) ※第一部完結?※
【SF 官能小説】

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(特別編)カプリコンの心/犬にチョコレートは毒-1

1
 またセラの兄のレオが、パトリシアたちのところにやって来た。セラとレオの母親が作ったアップルパイなぞ持って、離れて暮らすセラの様子を見に来たと。

「ほんとはさ、パトラ(パトリシア)が目当てで会いに来たんでしょ?」

 口さがないセラは、肉食小動物のようにニヤッとして、肘で兄を突っつく。それから彼女はパトリシアにこんな風に言うのだった。

「お兄ちゃんってさ、奥手だし女性に免疫なさそうだけど、子供の頃からちょっとは私が慣らしてるから。よくシャワーしてから素っ裸でウロウロしてて、母さんに「はしたない」とか「お兄ちゃんは男の子だから気を遣いなさい」って叱られたし。朝とか、起こそうとして上に跨がったら、チンチン固くなってて悪戯してやったり。
だから、パトラもそんなに身構えて真面目に考えなくたって。ちょっと誘えば、お兄ちゃん土下座で有り難がるだろうし、パトラだったら絶対大歓迎だもの」

 パトリシアとしては、嫌ではないし、むしろ嬉しい。
 けれどもどうしても気後れがしてしまう。
 それは単純に自分が二歳年上というだけでなく、自分自身の過去の経緯での劣等感や罪悪感だった。あの、不幸な事件で自分が原因で死ぬきっかけになった少年兵のことも忘れられない。パトリシア自身もまだごく若いから、過去の不運な事情はあれども、恋愛や結婚に希望を持たずにいられない。何か深い仲になったり、さらに自分が執着せずにいられなくなったり、この青年の一生を巻き添えにすることを申し訳ないように思う。
 どうにか曖昧な笑顔で流す。
 お茶話の後で帰り際、レオが「すごく哀しそうな顔してる」などと言うので、つい目を逸らして「そんなことないよ。今日は楽しかった」と答えるのがやっとだった。
 ついでに犬に尻を鼻先で突っつかれ、なんだかやましい気分にもなる。「めっ!」と怒ると、耳を寝かせた頭を下げて会釈しつつ、したり顔で「わぉん」と吠える。コイツなりにはご主人様を心配した行動でもあるのだろう。それに、レオとお茶を飲みながらちょっとばかりスケベなことを考えたことも、犬の嗅覚で丸わかりか。悔しいので、両手で小憎らしい頭を挟んで「こいつめ」とムニュムニュ揉んでやった。


2
 カプリコンの頭部コックピットに一人で座り、黄昏れた気分で溜め息する。
 そうしたら、急にシステムが違う動作を始める。
 バイオメトリックス、何とか。どうやら人工知能がパトリシアのメンタリティに反応したらしい。
 カプリコンが見せたのは、過去の機動データの追体験だった。戦時中やパトリシアと出会う前の記憶。この機体の試験的・特殊なインタフェースシステムは、単に過去の稼動中の映像や音声だけでなく、パイロットの感情までを記憶しているらしい。そしてそれらのデータを蓄積・整理や解釈・再編集している人工知能も、普通とは違った特別なものらしかった。
 燃え盛る、崩壊していく町並みに立っている。
 カプリコンは大型のマシンガンを小脇に抱えて、背中には赤い翼のような増設ブースターを装備していた。胸部と腰回りなどにも、プロテクターのような増加装甲があり、喉のコックピットの上には機関砲と大型遠距離カメラを兼ねた(「どら焼き」のような形状の追加オプション)ダミー頭部まで付いていた。腰の後ろには、短剣までマウントしている。
 ここは戦場だった。
 ほんの一日前まで人がいた町が戦火に包まれたのだ。
 そのときのカプリコンのパイロットは戦闘行為を躊躇わず、構わず敵のロボットウォーカーと交戦し、撃ち倒し切り裂いた。建物や自動車を踏み潰し蹴飛ばして前進して、逃げ遅れた人々に構うこともなかった。
 けれども、それを「良い」とは思っていなかった。
 今のパトリシアにインタフェースシステムを逆流して伝わってくるのは、不愉快な腹立たしさや悲憤と戦火拡大と犠牲増大への焦り。
 カプリコンのバイオメトリックスシステムは感情を記憶しているわけで、そういうパイロット自身の感情や感性からも、人工知能は「学習」していく。どういうときに、何を「嫌だ」とか「悲しい」とか「腹立たしい」と思うかという、感性の判断基準を。それはこの機械の「心」とも言えるもので、パトリシアとの出会いで彼女を殺さなかった理由でもあるのだろう。


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