崩壊してなお混沌ガラパゴス(第二章裏ED)-1
1
ミソネッタ州軍閥の正規部隊、ガバナー(歩兵型)七・プロメテウス(二足歩行戦車型)八。オールキル(皆殺し)の設定で、全長五メートルの小型ウォーカーが十機ほど投入された。
最初から、誰も助ける予定はなかった。
大前提として「助ける価値のある者はいない」。
あくまでも「皆殺し」である。
2
事後の調査で、奇妙な女の死体が発見された。
残された録画ビデオによって、意味は理解された。
「よーし! これから豚と交尾だ! ガキが生まれたら、お前にも一口くらい食わせてやるよ。は? お前なんかたいして値打ちないから、面白半分で実験だよ。死んだら死んだで構わん」
豚のペニスは子宮に入り込んで、大量の精液をぶちまけ、それから粘液で子宮口を塞ぐらしい。
その不可解な死体は、自分で包丁で腹を切り裂いて、子宮を掴み出した格好で死んでいた。子宮は豚の新鮮な精液で膨らんで、パンパンになっていたそうだ。
死後一日くらいだったから、タッチの差であった。
3
近隣の森で、野生化した若い女と少年が、裸同然で狩猟と採集の原始生活を送っているらしい噂話がある。その辺りの住民からは「人猿」だの「原始人」だのと呼ばれて、凶暴性を懼れられているらしい。
どうやら、ゲリラ拠点で飼育されていた奴隷女(人質交換で引き渡された自己責任)と少年兵見習いの逃げ出した連中が、逃げ出して大自然で野生化したものらしい。たまに人里に下りてきて、畑を荒らしたり、人を襲うため、定期的に狩で「害獣駆除」で間引きされている。あいにく繁殖力があるようで、一つの「新人類部族」のようになっており、村人カウボーイや保安官たちと熾烈な生存闘争になっているそうだ。
呼び方が「人猿」ではあんまりなので「山人」と呼ぼうという意見や運動があったが、今度は木こりや猟師たちから「あんなものと俺らを一緒にするつもりか!」と(ノンポリとして)珍しく怒りの苦情が殺到した。「木こりや猟師は村人と州軍閥のファミリーで同じ人間」という怒りの声も寄せられた。
それでついに自称・人権活動家の学者が画策した「村人の精神的分断工作」だったことが判明、ゲリラ側との関係も判明して、大勢が斬首刑になる騒動にまで発展したらしい。懸命に抽象論で言葉遊びして「学問とは〜」「弾圧にだ!」「博愛主義だからゲリラの人権は村人の命より重い」「スーパーフリーダミズムは略奪とレイプの前衛的価値を擁護する」などと理屈を捏ねて体裁を繕って逃げ回るのを、官憲や民兵が小突き引きずり出して(前々からの調査である程度は怪しい奴がリストアップされていた)穴に埋めたとか。
世界はなおも混沌ガラパゴスであった。
(第二章裏・完)